『つよがり』

 辛い現実を受け入れなければならないときもある。背を向けたら余計に辛いだけだ。歯ぎしりをして前を向くか、歯ぎしりして背中を向けるか、その差は大きい。目の前にある現実こそが真実である。理想とかけ離れた事実こそがすべてである。
 理想と現実の落差に潰されるとしても、せめてそれが現実であることを受け入れよう。そこから何かが始まる、いや、始めなければならないことを自覚したい。
 この哀しさ、辛さを記憶して僕は、今日からの僕に変わる。今までの僕に乗っけられた現実はあまりにも厳しいけれど、それでも僕は僕で居続けようと思う。
 強がりから始まる日だってある。脆さをわかりきっていながら、せめて強がってやる。



『イベント仕事』

 月末には3箇所でイベントをやることになり、来月も大きなイベントがひとつ待っている。僕らのイベントはそのほとんどがディスプレイである。MCが立って「はい、みなさんこんにちは~」と始まるのとは少し違う。見たものすべてが答えとなるから始まってしまえば演出を変えたり誤摩化したるすることも出来ない。
 クライアントの要望を読み取って、それを視覚的に表現することはこれまでにも何十回とやってきたが、今まではそのほとんどが平面、つまり紙媒体での表現だったが、近頃はやたらと立体空間の中で表現することが多くなった。僕は病的な方向音痴で、具体的なプランを平面上で考えることはできるが、それを3Dにするとなると思考回路が混線してどこに向えば良いのかわからなくなってしまう。いや、最近はリハビリというかトレーンングの甲斐あって、なんとか平面から立体へそのままアイディアをバトンパスできるようになってきたけれど、それでもまだまだ僕の思考は安易にそっちへナビしてくれない。
 ただその分、アイデアがどんどん立体化してくるとワクワクして嬉しくなってしまうのである。
 昭和40年代に幼少期を過ごした、大プラモデル世代でありながら今まで一度もプラモを組み立てたことがない超アナログ人間であるが、その分人よりも「ほんとにこんなになっちゃうんだ」感が強く、出来上がった空間への満足度もすこぶる高い。
 やもすれば苦手だった分野がいつしか楽しめる仕事になってきた。これも成長というのだろうか。



『最高な夜』

 昨夜は夢のような夜だった。ある御方の還暦記念パーティに御招きいただいて信じられないような時間を過ごさせていただいた。何十年も前からずっと走り続けていらっしゃる大先輩方が揃い、その背中を見ているだけで胸がいっぱいになった。
 その御方にも知らされていなかったシークレットパーティ。台風一過の夜だったが、そこにはまたひとつ大きな嵐が吹き荒れた。それは人々や家屋を傷めるものではなく、どうしようもないスピードと深さと優しさと、そしてさまざまな人たちの想いが入り交じった『時代』という嵐。
 ずっと昔から吹き荒れていた。吹き荒れて、僕らの背中を押して、いつしか吹き去り、そしてまたすぐに新しい嵐を連れてきた。時代が変わっても世界が病んでも、けっして変わらないもうひとつの『時代』。
 叫び、吠え続けてきた大先輩がただ穏やかに目尻と口元を緩ませて、ともに生きた人々と酒を酌み交わし握手をする。時代と戦うことで真の優しさを身にまとった永遠の少年。
 この人の時代はまだ終わらない。第二章だとか三章だとか、そんなんじゃない。ずっともがき転がり続けることで自分を確認してきた透き通るほど純粋なロックンロール人生に人々は心を打たれ奪われ、それはいつしか時代となった。僕らはといえば、その終わりなき旅を駆け抜ける列車に便乗しただけであるが、そこから降りようとする者は誰ひとりとしていない。そしていくつもの時代を窓越しに眺めてきた列車は、まだ見ぬ景色に向ってひた走る。
 カッコよさ、強さ、優しさ、儚さ、そのどれもの意味がはじめて具体的にわかった夜だった。
 還暦おめでとうございます。いつもその場所に居ていただけることに、心より感謝しています。



『別珍の日』

 今日はシーズン初めて別珍のジャケにオーダーメイドのハットを被りました。黒のシルクのシャツなんか着たりして。台風だというのに馬鹿げていますが、久しぶりに何を着ようか悩んだ朝でした。
 ちょっと予定があるもので、窓を打つ暴風雨を無視してクロゼットの中を探検していたのです。
 昼過ぎには雨はやみ、風だけはびゅーびゅーやってますが、それでも陽が射し込んでなかなかの秋の日です。
 プレーオフ第一戦では松井が2ラン打ったし、良い一日になりそうです。
 今日はとあるPARTYに出た後、梅ちゃんの店によって永ちゃんをかけてもらうことに決めている。そしてつぶれるまで飲もうと決めている。イヤなことがあったわけじゃないよ、逆だよギャク。だから別珍。



『かなしいはなし』

 先日会ったチカに、同級生のTが死んだことを聞いた。理由は書けないが凄惨な最期だったという。スポーツ選手として能力に恵まれ全国にTありと知らしめた男だったが、問題も多い奴だった。人付き合いもそれほど達者ではなく、つまらないことでケンカを繰り返していた。 
 同級生とは同じ学び舎で同時期を過ごした者のことを言うのだけれど、正直言って、ほとんどの人がほんのひと握りの人としか交流を続けていないものである。ずっと母校のある町に住み続けている人だって、きっとそうだ。まして俺達のようにふる里を離れて何十年も経てばなおさら。そうなればほとんどの同級生は思い出の中だけに留められる。
 思い出の中、とは都合のいい言い方で、実際のところは存在すら忘れていることも多く、こんな不幸な報せが届いたときだけ、そっと思い出の中から引っ張り出すだけの存在。そしてもっとも辛いのは、死んでしまった奴が輝いていた頃を思いだすこと。
 誰も未来のことなどわからない。突然降って来る不幸、死。避けられない運命、予想できない未来。誰もが思い出の中の誰かと会話をして現実の虚しさを知る。
 俺は、誰かの思い出の中にある俺を裏切っていないだろうか?視えない未来に対して背を向けてはいないだろうか?
 喧嘩っ早くトラブルメーカーだったが、それでも俺のアパートにはよく遊びにきたT。昼間っからハイボールを飲んで、夕方にはベロベロに酔っぱらった。きっとどっかでトラブルを起こしてきたんだろうなと思っていたが、奴がそれを知られるのが嫌なことぐらいわかっていた。だから何も聞かずに、ただ笑って飲んでた。確かにめちゃくちゃな男だったが、俺にはなんか優しくてどこか可愛さを見せてくれてたような気がした。
 16年前に名古屋で会ったのが最期だった。あの世でちゃんと幸せにやってほしい、そう願うばかりだ。
 俺はけっこう、お前のこと好きだったぞ。さよなら。




2009/10/15

『つよがり』

2009/10/13

『イベント仕事』

2009/10/09

『最高な夜』

2009/10/08

『別珍の日』

2009/10/07

『かなしいはなし』
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