『浅草から三茶へ』

 昨日は広告代理店の部長と映画監督と3人であるアーティストに会いに浅草へ行ってきた。CM制作に不可欠な存在なので、某スタジオを借り切って彼のパフォーマンスを存分に拝見させていただいたのだ。
 それはよし。申し分ない。すばらしい腕前だった。気分がいい。飲むか、ということで浅草寺近くのおっさん飲み屋でホッピーをグビグビやった。50歳と49歳と47歳。33歳のアーティストが平均年齢を下げてくれたが、どっから見てもおっさんを隠せない中年飲み会は猫も笑わないダジャレ連発で抜群に楽しかった。
 そのまま三茶へ。久しぶりにヨシコの店で騒いでから、部長行きつけのカラオケスナックへ連行され平井堅なんぞを歌ってしまった。いつもカラオケ嫌いと言い続けているが、本気で歌い上げてる自分に陶酔してしまった。まわりの客のわざとらしい拍手がなぜか嬉しくて調子に乗ってサザンを連発したら、もう拍手は返ってこなかった。
 知るか。唄いたい夜もあるのだ。なにがどうという理由ではないが、唄でなにかを誤摩化さなきゃいけない夜もある。そんな夜だった。
 おやじの酒はバカでバカ明るくてなさけない。それがおっさんと酒の関係だ。そんなの百も承知で俺は酒場に向う。猛暑の夜にふっと風が吹き抜け一瞬の秋を運ぶ。酒と涙とおやじ数人。人生なのだ。




いい店だった。




『電車の中の嵐』

 盆明けの田園都市線。10時あたりの電車は太りはじめた主婦でごった返している。そのほとんどがお友達(たぶんママ友)でそれぞれの日常で起きたことや好きな芸能人の話を大声で話している。
 今日もそうだった。ちりめんのフレアーになったワンピにレギンスを組み合わせた主婦ふたりが、ブランド物のバッグとコットンのエコバッグを下げて楽しそうに話していたのですかさず耳を澄ますと、マツジュン、ニノ、アイバくんという記号が聴こえてきた。嵐かぁ。俺も好きだしかなり関心がある。

「ぜったいマツジュンでしょ。一緒に花火なんて観たら死んじゃうかも知れないっ」
「私は母性本能くすぐり系派だからアイバくんだな。彼って動物好きじゃん。あれ、きっと会話してると思うんだ。だって話しかけられてる動物が心許してるのわかるもん」
「ニノは?」
「彼は役者派だから繊細で不器用かも。サクライくんは上手いよね、立ち位置。嵐の中でどこを取ればいいのかちゃんと分ってる。影のリーダーじゃない?」
「リーダーってさ、なんでどこのグループも癒し系なんだろ?TOKIOのジョーシマもそうじゃん。彼らがいなかったらジャニーズって絶対お笑いの方に行けなかったと思う。それまではどっかバカやってもアイドルが抜けなかったでしょ。TOKIOがいなかったら絶対KinKiのツヨシなんてウイてたよ」 
「中居くんはどうなんだろ?言われてみればなんとなく癒し系だけど、やっぱSMAPの癒し系はシンゴ君でしょ。あとV6だったらイノッチだけど、リーダーは坂本くんじゃなかったっけ?彼って癒し系?」
「まぁ全部が全部じゃないけどさ、ちょっとボケ役っていうか、そういう人をリーダーにした方がメンバーの連帯感が強まるんだよ」
「でもさ、たとえばTOKIOのヤマグチとリーダーと、キムタクとナカイくんとかほぼ歳おんなじじゃない。ジャニーさんからおまえはTOKIO、おまえはSMAPとかに突然分けられちゃって急に仲悪くなっちゃうとかないのかなぁ」
「あるでしょ。っていうか同じグループでも絶対キムタクとナカイくんとか、ナガセとマツオカって絶対仲悪そうじゃん」
「でも嵐は絶対そんなことないよね。休みなんかみんなで一緒に旅行行ってそうだもん」
「そこが嵐なんだよね」
「そうそう、ぜったい嵐なんだって」

 車内は冷房がキンキンなのに主婦たちは花柄のハンドタオルで汗を拭きはじめている。よほど白熱しているのだろう、彼女たちはこんな下らない話をするだけでカロリーが消費できることを知ってしまった。
 だけどきっとこの主婦たち、渋谷あたりでランチ&ケーキセットなんか頼んじゃって、帰りの電車ではもっと豪快に汗かきながら嵐の話してるんだろうな。
 あと、マツジュンと一緒に花火行ったら死ぬかも知れないけど、ぜったいマツジュンは一緒に花火行かないと思う。



『鎌倉ロケハン』

 鎌倉へロケハンに行ってきた。夏休みの国道134号線は混雑して面倒くさくて嫌だが、やはり海辺の町はいいものだ。極楽寺、長谷寺、八幡宮、七里ヶ浜、稲村ヶ崎、江の電、どれもが映画やテレビに出てきたシーンばかりで景色を見るだけでクワタの歌声が聴こえてくるようだ。夏の湘南はやっぱりいい。今じゃ若者はサザンよりもキマグレンか。
 海水浴客で賑わう海は昔となんにんも変わっていない。水着とスピーカーから流れる音楽が変わっただけで、若者たちは陽気で軽薄だ。どいつもこいつも胸騒ぎの腰つきしてやがる。
 ファミリービーチではやっぱりスイカ割りやったり砂の中に子供を埋めたりしているんだな。時代は目まぐるしく動いているようだが、浜辺の人々はほんとになんにも変わっちゃいない。100年位前だって、きっと男はふんどしで泳いでいるだろけどそれ以外はまるで同んなじなんだろう。その頃の女性が人前で肌をさらすことが社会通念としてどうだったかは知らないが、それでもナンパしたりされたり、そうじゃなくてもうっすらとそんな予感に胸を高鳴らせて海を眺めていたんじゃないのだろうか。
 帰りは葉山の先の佐島マリーナ近くの定食屋で海鮮丼を食べた。そのあとは近くの海産物屋で釜揚げしらすを買って帰った。釜揚げしらすはいかに素早く蒸して、いかに素早く水気を取るかが鮮度と味を保つ秘訣だと海産物屋のおやじ(漁師)が言っていた。喋り言葉はこれが湘南の人間かよ?とビックリするぐらいべらんめーの巻き舌だったけど、目ん玉はキラキラと輝いていた。おやじの店には釜揚げしらすを抜群の状態にセットアップする機械があり、その機械の説明を事細かく、しかもイタリア語みたいな発音の日本語で雄弁に語っていたので半分以上は理解不能だった。
 面白いロケハンだった。勉強にもなった。今日も初対面の人と10人位話せた。仕事とはいうものの、夏休みのような輝いた一日だった。



『地震』

 出張先の浜松のホテルで寝てたらものすごい地震が起きて、条件反射のように机の下にもぐりこんだけど、机の奥行きが短くて左半身はマヌケなノーガード。しばらく揺れはおさまらずグラグラガタガタギシギシとさまざまな擬音が恐怖をかきたてた。
 それからしばらく眠れず、ここで死んだらどうしようと、ちょっとした孤独を味わった。夜中なので一緒に宿泊している仲間に連絡をとることもできず、誰かドアをノックしてくれないかなと期待しつつ、淡々とニュース原稿を読み上げるNHKを観ながら朝を待った。
 旅先の地震は本当に怖い。孤独さが倍増する。しかも今回の揺れは今まで体験したものの中でもトップクラスのものだった。
 予約していた新幹線は運休となり、いつ来るかわからないひかり号を待って飛び乗ったはいいが、4時間も乗車するハメになり、大切な打ち合わせに参加する事もできず落ち込んでしまった。
 朝のニュースで、東名高速で牧ノ原インターあたりの本線道路が陥没する瞬間の映像が流れていた。通行止めになっていたから良かったものの、もし……。
 おーこわ、お盆だし、高速道路通行料金1000円だし、張り切ってクルマで帰省する人多いだろうし、ほんとに今の世の中何が起こるかわからん。
 地球上に施したハリボテが天災によりメリメリと剥がされていく。山は崩れ川は氾濫し海はドロで汚染され、道路も家屋も粉々である。
 健康と品行だけではなく、運なんてものをしみじみと思ってしまった。
 周囲に気を払い生きる事も健康の条件とは、生きづらい世の中である。



『寝週末』

 土日は久々に爆睡した。起きるまで寝て、起きても身体の要求をそのまま受け入れて横になり、やがて本気で寝た。これを2日間繰り返したらかなり気分が晴れた。エアコンは使わずに扇風機だけだったからシーツがグショグショになった。それを手に取って農家の収穫のように「よしよし」と頷く。この汗は月~金のストレスが液化して対外に排泄されたものじゃと、心の中で日本昔話のナレーションみたいに呟きながら納得した表情を浮かべ、洗濯機にぶちこんでバリッと干す。素晴らしい週末だった。
 寝過ぎて身体が痛くなったので近所の50メートルプールへ行って泳いでいたら、肩の関節が油の切れたギアみたいにギシギシ言っていたので水中ウォーキングに切り替え、約1時間ずっと水中でカラダを動かした。
 いい感じの肉体疲労があったので、今日も快眠!と気合いを入れて寝ようとしたらカラダが火照って眠れなかったので週末に借りてきた『リング』を観た。ムードを出して部屋を真っ暗にして観てたら怖くて動けなくなってしまい、しばらく本気でテレビから貞子が出てくるんじゃないかと思った。テレビの電源を消しても画面にうっすら映るものが全部貞子の親戚に思えて本当におっかなくなってしまい、電気を煌煌とつけて寝た。記憶はないがどうやら夜中にエアコンをつけたらしく、朝起きたらかなりグッタリマンデーになっていた。
 しかも昨日の新聞のラテ欄を見たらBSで『リング』がやっていた。ちょっと損した。




2009/08/19

『浅草から三茶へ』

2009/08/18

『電車の中の嵐』

2009/08/13

『鎌倉ロケハン』

2009/08/11

『地震』

2009/08/10

『寝週末』
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