『郡上八幡へ行く。』

 今週末は田舎の祭りだ。あんどんコンクールといって各町内やサークルが自分たちでそれぞれに工夫を凝らして神輿(みこし)を担いで街中を練り歩くのだ。
 田舎では神輿を担ぐとは言わない。「吊る」という。相撲の吊り出しの「吊る」。下からぐいっと持ち上げることから言うのだろうが、これがなかなか東京では通じなくて苦労した。さらに学校で掃除をするときに机を移動することも「机を吊る」と言う。先生が「はーい、みんな一斉に机吊ってちょーだい」というのが完璧に標準語だと思っていた。
 そんな田舎の祭りを通り越してもう少し先の郡上八幡に行く。水と光のイベントをやるらしく、お声をかけて頂いたので、実施に当たってのロケハンだ。
 カメラマンのキムちゃんは以前、ロケハンの意味を「ロケ半分」と解釈した。笑える話だがあながち間違いでもない。正しくは「ロケーションハンティング」。いわゆる現地視察であるが、大概半分以上は遊びなので、キムちゃんの解釈はほぼ正解である。
 郡上八幡、いい町だ。歩いているだけで涙がでそうになる。どこを歩いても水の音が聞こえる穏やかな町。町なかの道路端には生活用水が流れ、川が流れ、人の流れも穏やか。ニッキ飴の老舗があって、一粒ほおばると口の中にシャープなせせらぎが流れる。
 実家からクルマで1時間ぐらいのところにあるのだが、きっと家には寄れないだろうな。寄ったら寄ったでどんちゃん騒ぎをやらないと気が済まないし、墓参りもしたいし…。けれど時間がなさそうだ。せっかくの祭りなのに。29年振りに見れると思ったのに。いいや、来年30振り記念に見に行こ。



『別注魂』

 「太った」の次は「目」だ。ちょっと悪くなった。小学校5年から30年間維持してきた2.0は42歳で0.5に落ち、先日ものもらいで眼科に行って測ってもらったら小学校2年以来の1.2になってた。ちなみに2年生の時の出席番号は12番。つまらんことをよく覚えとるもんだ。
 抜群に視力が良いのに高校2年からダテ眼鏡をかけていて、それが現在も続いてて今ではダテ眼鏡が20個ほどある。白山眼鏡とか999.9とかEFFECTORとかそれなりのブランドが好きだが、シャネルとかグッチとかアルマーニとか洋服屋のものはあまり好きじゃない。それは靴に関しても同じで、靴屋以外が作る靴、いわゆる洋服屋から出てるようなものは滅多に買わない。ウソ、ジェネラルリサーチは買いまくったわ。でもあれは小林さんがシューズデザイナー出身だからいいのか。
 そう言えば昔、小林さんとスタイリストの北村勝彦さんと編集者の内坂さんとミズノが一緒に開発した『TARZANシューズ』のチームに小僧として参加させていただいたが、ちっとも売れなかったな。
 
 いま、本気で老眼鏡を考えている。スタイリストの大久保篤志さんがしている遠近両用ものを拝借したら、なんとまぁ視えること。眼鏡の偉大さを初めて実感するとともに、視力の衰えに落胆する瞬間でもあったのだが。
 いくら老眼鏡とはいえ、本気の眼鏡を作ることはなんか嬉しいぞ。前歯に金歯を入れる成金のおっさんの気持ちがわかるような気がする。
 なんでもかんでもオリジナルを発注することは嬉しいもんだが、この調子だと肉体の衰えとともに何でもかんでも別注をかけるような気がして怖い。そのうち屋久島天然杉の杖とかBOSEの補聴器とか有田焼の痰壷とか…。
 別注は老眼鏡で留めとかんとヤバいな。ブルーベリー食って老眼治そ。



『ちょっと太った』

 油断してたら2キロ太った。6キロ痩せて2キロ戻って、今67キロ。65キロになったときは少し軽い感じがしたが今は浮いた感じがないもんな。でもちょっとヤだ。65キロ以下にしようとは思わないが、せっせと我慢を溜め込んで6キロ痩せたのに、不摂生でまた2キロ戻って情けない。
 観られる商売じゃないからまだいいが、それでも人と対面することは多い。
 そして人は人を視覚で記憶する。だから久しぶりに会ったときなどは、痩せた?太った?髪切った?となるわけだ。
 なかなか「太った?」とは言いづらいもので、特にそれが女性だったりすると、「あれ、なんか幸せ満点な感じ」とか言ってポジティヴな言葉の裏側に本音を隠す。けど気がつかない人がほとんどで、「そーかなー。ま、ネアカだし」なんて都合のいい言葉で切り返されたりするけど、それはそれで問題ない。
 ところが女性に「痩せた?」と聞くと「そーなのー、なんか最近なに食べても太んなくてさー、困っちゃう」と露程にも思っていないことを眉をひそめて力説するからうっとーしい。本当はめちゃくちゃ過酷なダイエットしてるくせに、とぼけた顔して「そーなのー」である。
 こちとらそれほど痩せたなんて思ってないのに、テキトーに聞いただけなのに、待ってましたとばかりに「そーなのー」がやってくる。ほんっとわかりやすいね女子という生き物は。
 
 炭水化物摂りすぎてるな。3日前なんてカレー3食だもんな。ひとりでルー1.5箱だもんな。とろけるチーズ4枚だもんな。横須賀の焼き鳥屋では、炭水化物は摂らないと豪語しながら大盛りサラダバクバクだもんな。ドレッシングダバダバだもんな。鳥皮大好物だもんな。痩せるわけねーわ。
 でも痩せる。というかスーッと減らす。2週間後には痩せた日記書いてる。

 追記。
 人は視覚で記憶すると書いたが、俺は匂いでも記憶する。いい匂いのする人はとてもすてきだ。



『クルマを洗った』

 あまりにも天気がいいのでクルマを洗った。といってもコイン入れてグィーンっていう例のやつだが。
 窓を閉め切り車中にいるとクルマ全体にシャワーがかけられ、なんだか俺まで洗浄されたような気がする。それまで車内の温度計は26℃をさしていたが、わずか5分間のシャワーで17℃に。俺の心にもインタークーラーが働いてスッキリして爽快な気分になった。
 そういえば初めて買ったクルマはアズキ色のギャランだったな。仲間からはゼンザイ色の「ゼンザ」と小馬鹿にされたが、それでも金メッシュのホイールを履いてちょっとだけ背伸びした。今から思えばなんであんなダサいのを選んだのだろうと思うが、俺の人生なんて自分でカッコいいと思っていただけでダサダサの連続だった。いつしかダサさを含んだオリジナリティが確立して、っていうか俺ってやっぱダサい。
 否定はしないがダサいなりに格好もつける。それがまたダサくなったりすることもあるが、ダサさを受け入れていると何にでも怖いもんなしでチャレンジできる。
 ただKYにだけはならないように気をつけている。KYって気をつけてどうこうって問題じゃないし、KYの奴がKYにならないように気を遣っても、そもそもそれがKYだったりするのでややこしいのだが、俺自身としては場の空気をぶち壊さないように心がけている。そして陰口を叩かれない人でありたいなと。
 そのためにはもちろん俺も陰口は言わないけど、面と向ってガツンと言いすぎても相手はシュンとなってしまうのでまたまたややこしい。あー、人間関係ってやっぱややこしい。
 そうやって面倒くさいことを避けて通り過ぎると、自分らしくないつまんない人間になってしまうんだろうな。
 せっかく洗浄された気分だったのに、また澱んできちゃったよ。
 いいや、外は快晴だし花粉もパワーダウンしてきた。夜になればビールも待ってる。
 けっこう幸せな毎日じゃん。



『ヨコスカ』

 横須賀の高架下で黒人の少年たちがたむろしていて、そこを通りかかったら明らかに威圧的な視線をよこして来たので、無表情でボーッと見てやった。挑発する気などさらさらない。ただ見ただけ。
 しつこいぐらい目が合い続けたのでなんか視線反らした方が負けみたいになっちゃって、そしたらあっちが目元と口元をクスッと緩めた。それがめちゃくちゃカッコ良かったので、ほーって感心したらその表情に驚いて「えっ?」ってなったので、親指立ててグーってやったら、あっちは手首をローリングさせながらグーを返してきた。これがまたカッコよくて。
 スラムでもなく何不自由ない日本の黒人少年たち。彼らにとって横須賀はどんな街なのだろう?海に軍艦が浮かんでて通りにはアメリカ人が溢れていて、だけど神奈川県横須賀市。明らかに俺たちがヨソ者でアウェーで、へんな街だ。
 8年前に春一番さんと来て以来だったな。あのときは渡辺商店でスカジャン買ったな。フリーペーパー「Z」で「ヨコハマ ヨコスカ特集」やったときだったな。この街はやっぱちょっと怖いけど、いや違うな、映画とか音楽のようなスリリングな余韻、それがいいのかな。
 また行こ、ヨコスカ。真っ赤なポルシェ借りて。




2009/04/16

『郡上八幡へ行く。』

2009/04/15

『別注魂』

2009/04/14

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2009/04/10

『ヨコスカ』
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