『鍋と青虫』

 ともだち3人と鍋を囲んだ。食材を買い込んでの学生みたいなスキヤキだ。学生時代は糸こんにゃくと油揚げと豆腐とねぎと春菊だけの具材だったが、今では多少裕福になりブランド牛肉なんかを豪快にぶち込み、もう肉なんか食いたくなくなるまで食いまくってそれから野菜へと移る。胃袋には食材の他にビールや焼酎もたらふく流し込まれていてかなりご機嫌である。
 さてと、白菜でも入れるか。そこで友人が青虫を発見。野菜は虫がつくほど新鮮と言うけれど、虫嫌いのAはぐにょぐにょと動く青虫を見て萎えた。それを見てSが「ちょっとかしてみ」と殺意満タンに言ったところで、さらに俺が「ちょっと待った」。
 俺は殺生が嫌いなのだ。ゴキブリと蚊以外は全部逃がす。ハエだろうがクモだろうが全部窓の外へフライアウエーさせることにしている。ただ青虫の場合は、フライアウエー後の落下地点に緑がなければ逃がしてもらった意味がない。専門知識がないので、単なる植物ではだめなのかもしれないが、そこは気持ちの問題だ。俺はわざわざ、マンションの路地裏へ渡り、細い道をすり抜けてとある民家の芝が生い茂る庭にフライアウエーさせた。芝が青虫を延命させるかどうかはわからないが、それでも指でぶにゅっと潰して流し台の排水口から下水管への直行便には乗せたくなかったのだ。
 殺生回避計画計8分。部屋に戻るとAとSが鍋のふたをぶわっと開けて食べ頃になった白菜が贅沢な湯気を放った。「ほんとにさー、青虫ぐらいいーじゃん」。たわいもない会話をしながらつつく鍋は格別である。
 ただ俺は逃がしてやった青虫が寒い夜の芝の上で凍え死んでいないか心配だった。
 生きていればいずれ蝶になる。頑張れ青虫、今度は自分の羽根でフライアウエーしておくれ。



『オバマ氏』

 オバマは今どんな気持ちなのだろう?大いなる志はわかるが、彼が就く場所は合衆国大統領だ。一番狙われ易い場所でもある。まして彼は有色人種だ。なぜ彼は命の危険を冒してまでも、その場所に就かねばならなかったのだろう?逆らえない天命なのだろうか?そういうことを命懸けの仕事というのだろうか?本当は心のどこかで負けた方が良かったかもしれないと思ったのではないだろうか?引き返すことができなくなってしまった人生に後悔していないだろうか?彼は本当に命を捧げられるのだろうか?CHANGEをWE CANするために自分を犠牲にすることができるのだろうか?自分だけではなく、周囲の大切な人たちをも巻き込んで失敗した場合の覚悟ができているのだろうか?今の状況から合衆国が富める国になるとすれば、日本を含む諸外国はどうなるのだろうか?
 彼の就く場所は合衆国大統領である。人気と話題と希望のあとにはどんな現実が待っているのだろう。
 黒人大統領がコケたらアメリカはどうなってしまうのだろう?ブッシュの次の大統領がコケたら世界はどうなってしまうのだろう?その前に麻生さんで大丈夫なのだろうか?



『ぶうめらん』

 地元の広報誌の編集者が3人で取材に来た。みんな少し緊張してたみたいだったが、とても活き活きしていた。すごくベーシックなインタビューをされたことが逆に新鮮だった。しばらくしたところで「どうしてこのような冊子を作ったの?」と聞いたら、代表者が「地元を外にアピールするのではなくて、地元の人に自分たちの町はいいなと思ってもらいたくて」と答えた。それは本音でもありキレイごとでもあり、最も高いハードルを掲げることでもあるが、そのような志を持って冊子を作ることは良いことだと思う。
 ただキレイごとをやるにも本音が必要であり、本音を吐くには毒が要り、志を貫くにはキレイごとも言わなければならない。もちろんカネの話も含めて。編集者諸君、君らにそれができるか? 
 君たちなりの考えで地元を変えていこうとすればいい。『変わる』という意味は『変える』ことよりも『気づかせる』ことなのかもしれない。さぁどうする?大いに悩みもがきチャレンジしたまえ。

 関市のみなさん、彼らの広報誌をそんな気持ちで見てあげてください。
『ぶうめらん』という冊子だそうです。田舎を出た人たちが、もういちど田舎に戻って来るようにと願いを込めてつけたタイトルらしいです。そういう意味じゃ俺は『ぶうめらん』ではないけど。



『風邪と病院』

 風邪引いた。熱も38℃ちかい。風邪を引くとほんとに弱気になる。3歳児にもケンカで負ける気がする。高校時代までは風邪を引いたら学校休めるからラッキーだったが、今は休むとその分ツケがまわって大変になるから休めない。休んでもやることねーし、寝すぎると腰が痛くなるからろくなことはない。とりあえず気をつけることは事務所のみんなにうつさないことだ。俺の部屋は隔離されているのでその点は大丈夫だろうけど、丸一日隔離されっぱなしというのも孤独でメゲる。
 病院行ったらものすごい量の処方箋を出された。大体病院ということろは患者を客だと思っているフシがある。弱気になって駆け込んでることをいいことに3週間分もケミカルを調合して、俺を中国産の食品にでもしようと思うのか?そんなぼったくり的な言い分にあったまきたので「処方箋は要らないと」断って、さっき駅前の薬局で漢方薬買ってきた。コレが効くがどうかは定かではないが、自分で買った薬なので効かなくても文句は言わん。
 せめて一週間で効かなきゃ風邪薬とは言わん。その前に一週間もすれば風邪は治るわい。人が治らんでも俺が治す。商売するな、人助けしろ!



『日本シリーズを終えて』

 クライマックスシリーズの導入、やっぱりダメだ。一言で云えば不公平である。不公平は不幸のはじまりである。プロ野球界の不幸とは人気の衰退である。もしセパ両リーグの3位同士が日本シリーズを争うことになり続ければ、完全にプロ野球は死ぬ。シーズン途中で「ペナントは3位以内でいい」という気持ちになった瞬間に、ファンの期待する戦いを裏切ることになるからだ。さらに最悪なシナリオは、ファンの間にも「3位以内でOK」という気持ちが芽生えることだ。それが怖い。

 今年の日本シリーズは素晴らしかった。両リーグで一番強いチーム同士がガップリ四つに組んで第7戦まで戦った素晴らしいシリーズだった。プロ野球人気を回復させるために導入されたクライマックスシリーズが、逆にプロ野球人気を衰退させていることにそろそろコミッショナーも気づかなければならない。
 プロ野球はメジャーリーグではない。プレイオフもクライマックスも要らない。セパ両リーグで年間を通して最高勝率をあげたチーム同志が日本シリーズを戦えば良い。日本シリーズは日本プロ野球で一番強いチームを決定するものである。リーグ2位とか3位に出場権を与える意味などない。
 日本シリーズの視聴率が良かったのは、そういうことなのだ。




2008/11/18

『鍋と青虫』

2008/11/14

『オバマ氏』

2008/11/13

『ぶうめらん』

2008/11/12

『風邪と病院』

2008/11/11

『日本シリーズを終えて』
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