『東京』

 故郷・関市の同級生といっこ上の先輩と前々から飲む約束をしていた。こんな日がたまらなく嬉しい。それほど毎日気を遣って東京弁を話してるわけではないが、故郷の人間が3人寄れば自然と方言の花が咲く。
 やっぱり気が楽だしここが東京じゃないような気がして、またそれも嬉しい。
 そんな愉しみを夜にとっておいて、朝からじゃんじゃん働いた。朝イチで郷ひろみさんのディナーショウの打ち合わせに参加してスタアにお会いした。ツアーファイナルから1ヶ月しか経っていないのに、もうディナーショウの足音がするなんてスタアは大変だ。ヒロミさん、いつどんな角度から見てもヒロミゴー、抜かりないわ、恐れ入ります。
 事務所で某メーカーの広報誌と某スポーツメーカーの打ち合わせをしてから、近所でジローラモの奥さんがプロデュースするカフェのレセプションがあるというので顔を出した。いつの間にかジロはちょいワルと呼ばれるようになり、俺も仲間に入れてくれと頼んだら、あんたは大ワルなのでちょっと違うと言われた。カフェの味はなかなかのもので、ちょっとだけLEONっぽさをブレンドしているところがニクかった。
 LEONっぽさってなんだと聞かれても適切な言葉では答えられない。単なるノリというか気分だ。
 それから同級生と合流してブラザー・トムさんのライブに行くため代官山へと流れた。トムさんのライブは実にいい。いろんな思いでやってきた人たちを、ちゃんとひとつの出口へと導いてくれる。これもうまく説明できないが、何度も足を運んでいる俺がいつも新鮮に感じるのだから、初めて観た田舎ともだちはどれほどの感慨を憶えたのだろう。そんなことを聞くのもヤボなので、そのまま行きつけの小料理屋に入った。 
 するとそこにはつい2日前にインタビューしたばかりの超大物女優というか歌手というか、とにかくその方がいらっしゃって、せっかくなので隣に座って一緒にお酒を頂くことにした。ともだちは静かな興奮に包まれたまま、ひとりは口を閉じることが出来ず、ひとりは口を開けることが出来ず、ふたりあわせてちょうどいいのに、という感じで固まっていた。
 その「めっちゃ田舎もん」感丸出しの空気を読んで、超大物女優というか歌手というか、その方が、「じゃ、みんなでカンパイ!」とやってくれたことで、ふたりは初めて「かんぱい」と言葉を発した。
 しばらくして超大物が一足先に帰り、3人カウンターに横並びになって不思議な感じになった。
 東京はすげーなーとか芸能人はやっぱキレイやなーとか、トムさんがどうのジローラモがどーの、ヒロミゴーってほんとに地球人とか、いろいろ。さっきはとても東京とは思えないと思ったばかりなのに、あっという間にザッツ東京のど真ん中で東京にこてんぱんにやっつけられていた。
 ただひとつ言えることは、酒を飲めばみんな同じになれるってことだ。それが酒の力であり魅力である。
酒を飲んでても偉そうなことばかり言う奴もいるが、そんな奴とは二度と飲まなければいい。せっかく大人になったのだから、好きな酒を好きな店で飲んで、そこにやってきたその店が好きな誰かと一緒に飲むことも酒飲みの醍醐味である。それが超大物であったとしても、グラスをカチンとやるだけでたっぷりと幸せな気分になれる。
 芸能人が登場しすぎてやや飛ばしすぎてしまったが、とっても嬉しい一日だった。
 今度ともだちと会う時は忘年会だ。早いな、一年。
 そう思えることも、ちょっと嬉しい。



『風邪長引く』

 風邪は喉と鼻からお腹へ、超痛くて困っている。食えばクダり、クダってはバタンっ。それを何度も繰り返し、終いには足がおぼつかなくなって布団に辿り着くときはなだれ込みである。近頃は酒もほどほど、スナック菓子もほぼ食ってないのに、健全な俺の胃腸を冒すとは風邪のパワーには恐れ入る。
 ただ風邪を引くとクシャミや咳と一緒に悪いものが飛び出してゆく気がする。熱なんか特に、体内の毒素がじわじわと毛穴から放出されるような気がして、ほんのちょっとだけ健やかな感じがする。なんてことを書いているが俺はMではない。あきらかにS、それもドSだ。
 薬を飲まないのも良くないのかもしれないな。元来、塗り薬であれ貼り薬であれ「クスリ」と名のつくものが嫌いで、とにかく病院臭いのがダメなのだ。とはいえ、自然治癒力だけで治すには時間も忍耐も必要だ。てっとり早く治すためには良薬と出会うことも必要なんだろう。

 話は変わるが、俺は今、猛烈に落ち込んでいる。ゾッコンというほど好きではないのだが、いつも頭の片隅にいい感じでひっかかってる「蒟蒻畑」が製造を中止すると決まったからだ。もういちど言うが決して大好物ではないが、なぜかかなりの頻度でちゅるんとやっては気持ちよくなっていた。アレで痩せようなんざ毛頭思っちゃいないが、ゼリー界(そんな世界あるのか)の中では革命的な商品で、性別年齢を問わぬバラエティ感溢れる商品だったのに残念でたまらない。
 あの食感ともこれでおサラバか。食の健康にはいろいろあるもんだな。話題沸騰の中国製品に毒が入っているのはもちろんダメだけど、誤って容器ごと呑み込んじゃって死者がでたら、それもやっぱりダメなのね。それを喉に詰まらせた子供の不注意と一方的に断定するわけにもいかず、蒟蒻畑はその歴史の幕を閉じるのか。
 朝、小倉さんが「じゃ餅はどうなの?毎年何人も喉に詰まらせて死んでるじゃない。でも製造中止じゃないでしょ」。すると知的なコメンテーターが返す。「餅は喉に詰まりますよという呼びかけがずっとされ続けているから、“注意”という点では啓蒙がなされている。蒟蒻畑は容器に問題があるのだし、餅とはケースが違うと思います」。
 ちょっとムキになった小倉さんに冷静に返す知性派。さては小倉さん、かなりの蒟蒻畑ファンではあるまいか?でもその安直な発言が小倉さんの良いところであり主婦の共感を得るというか、主婦そのものなんですな。スパッと言い返された後のムスっとした顔なんか、気位の高いおばさんそのもの。
 さて、明日の小倉さんの顔を拝む時には少しは風邪が治っていればいいけど。



『風邪ひいた』

 風邪ひいた。喉いたい。毎日手洗いとイソジンしてるのになんでだ?風邪をひくと落ちる。今日は大切な撮影なのにバッドコンディションだ。素粒子研究とかで日本人の偉大な学者がノーベル賞を受賞したことは素晴らしいが、一発で効く風邪薬を作ってくれたら間違いなくノーベル賞だろうな。世界中で何百年も流行し続けてる病気だもん。あと水虫の薬も。
 風邪と水虫の特効薬ができたら世界はどれぐらい楽になるだろう。製薬会社は爆発的に儲かるな。 
 他にノーベル賞受賞に値する発明といったら、ウソ発見器かな。できたら警察は要らなくなるよね、ってゆーか悪徳警察官は逆にヤバいな。政治家なんてみんな有罪だし、そんなもんができたら日本中の大人はみんな困ってしまうな。主婦も旦那みんな大迷惑だ。
 ということは、やっぱこの国にウソは必要なんだ。でも相撲の八百長事件のこととかはではぜひ試してほしいし、ロス疑惑や拉致問題でも試してほしかった。そんな機械が出来たらDNA鑑定と2強になるだろうな。それでも北朝鮮とかはきっと認めないだろうけど。
 とりあえず早く風邪治したいわ。



『秋の夕方』

 秋の気候は気持ち良くて好きだけど、夕暮れ時が寂しくていやだ。これからどんどん陽が短くなっていくのが手に取るようにわかるのがいやだ。冬至から夏至に向って陽は長くなり、やがてまた冬至に向って陽は短くなる。あたりまえのサイクルであるが、「涼しい」から「肌寒い」に季節が変わった頃から急加速して日暮れが早まってゆくのがいやだ、というか寂しい。
 まだともだちと遊んでいたいのに、家に帰られないと怒られそうな気がしたあの頃のもどかしさが足下から脳天に向って突き上げ、やがて心臓でドクドクと寂しさのジタンダを踏みならす。大人になって親に叱られることもなくなり夕食時間もめちゃくちゃになったけれど、事務所の窓の向こうに暮れゆく夕陽はやはり寂しい。
 寂しさを掻き消すためにウクレレを弾いたみたけれど、ついこの間までは陽気な気持ちになれたメジャーコードもなぜか失恋映画のBGMみたいに聴こえて仕方ない。だからもうこの時間は弾かない。
 なぜなんだ、秋。夕暮れ。乾いた寂しさは苦手だ。それより思いきり寒さでいじめてくれ。唇が紫色になって歯がカチカチと音を立て両膝がコツコツとぶつかるぐらいに冷たくしてくれ。こんな清々しい季節なのに、ビジュアルだけ寂しいのは卑怯だ。
 来週からクリスマスまで、できるだけ夕方5時から7時までは打ち合わせを入れることにしよう。



『美人マネジャー』

 スタイリストのマネジメントの女性が作品を見せに事務所にやってきた。とても美しい人だったのでしばらく見とれていたら、年齢が40歳と聞いてさらにその美しさに付加価値が加わり、あからさまに見とれていたら、岐阜県出身ということが判明して、見とれていた時の距離は一気に縮まり、知らぬ間に友人のようになっていた。
 出身県が同じということだけでどれほどの引力が働くのだろう。彼女の出身地は岐阜県内では比較的、俺の故郷から遠い場所なのだが、それでも郵便番号や電話番号のはじまり3ケタが同じだったり、東京弁で喋っているつもりなのにイントネーションでバレたりすると、仲間意識を感じてやまないのである。
 彼女も岐阜出身であることを隠すこともなく、むしろ岐阜県というマイノリティが逆にカッコいいんですよねぇという負け惜しみとも思えるクールな発言をサラリとやってくれるところが、岐阜出身ならではのロックなのだ。
 岐阜出身者同志のベタな会話である有名人並べも彼女は自ら言い出した。これは誰とやるにしてもテレコ(交代)で言わなければならなくて、しかもかなりマジになり、勿論、名前が止まった時点で負けとなる。
 まずは彼女から、「えーと、黒夢の清春」「熊田曜子」「細川茂樹」「伊藤英明」「山本寛斎」「寺脇康文」「日比野克彦」「中条きよし」「神無月」「Mr.マリック」「野口五郎」(だいたいこのあたりからシブくなる)「清水ミチコ」「竜鉄也」「岡田奈々」「あいざき進也」「橋本真也」「新日の棚橋」「ミノワマン」「高木守道」「高橋尚子」(いつしか芸能人からスポーツ選手へ)…「えーとえーと、斎藤道三」
 だいたい斎藤道三とか島崎藤村とかになるとそれでネタ切れ。
 俺はこのテのネタにめっぽう強いが、ここまで苦しめたられたのは初めてかも知れない。
 彼女はスタイリストのブック(作品集)を見せるまでに1時間20分以上かかり、ブックをわずか5分間見せたあとまた1時間以上にわたり岐阜の話と過去に付き合った彼氏の話なんかを聞かせてくれて、最後にトイレを借りて帰って行った。
 岐阜出身で頑張っている人はいっぱいいるなぁ。なんてことない話だったけど、すごくリラックスできた。彼女もきっと友だちか誰かに「こんな人がいてさぁ」と話してくれていると思う。
 ただそれだけの話である。




2008/10/23

『東京』

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『風邪長引く』

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