『1000円』

 いつも昼飯は外で済ませるが、だいたい相場は1000円程度である。そこで、1000円。これ、結構な値段である。10年位前は財布に3000円入っていればかなり安心したし、5000円も持っていれば悪いことをしているような気持ちになった。
 1000円、大金だ。これを昼飯につぎ込むことは、ものすごいことだ。

 そもそも僕の仕事は時給にしたら幾らになるのか?具体的なことを言うといやらしい話になるのでやめますが、25年前に「ほかほか弁当」でアルバイトしたときの時給は480円だった。その前の年に兄貴の紹介で入ったピザ屋では450円だった。
 ピザ屋は能力に応じて40円刻みでじわじわバイト代を上げてくれるというから少し燃えたが、僕より一週間ぐらい前に入った日大商学部の奴が偉そうにしていて気に入らなくて、そいつに「新人くん、皿洗っといて」と言われ、その言われ方がまた気に入らなかったから、「お前が洗え、先輩くん」と言ったら、店長か店長代理みたいな太ったおっさんに呼ばれ、「お前、入った早々生意気な口きくんじゃねー」と言われ、「うるせー、じゃやめたるわ」と言って、そのまま店を出てやった。 
 後日、兄貴の顔を丸潰しにしてしまったと反省していたところに、兄貴から「どや、バイト続いとるか?」と聞かれ、ここで嘘をつくとドツボにハマると思い、殴られるのを覚悟で「やめた」と正直に言ったら、「そうか」と兄貴。あれ、怒ってないぞ。よし、一件落着。良かったー正直に話して。

「そんで何日やったんや?」
 しまった、想定外の質問だ。今度は正直に言ったらぶっ飛ばされる。でも、もひとつ心を決めて正直に…
「1日」
 殴られる…こわっ。
「1日っ?」
「うん、1、にち…」
 …………
「どーするんや、バイト料もらったんか?」
 ん? そっち?と不思議な気持ちになりながら、「いや、まだ…」
「たーけ、今すぐもらいに行けっ!」
 おいおい、そっちで怒るか。
「俺が行ってきたろか!」
「いや、いいよ」
「だっておめー、何時間か知らんけどちゃんと働いたんやろ?」
「ちゃんとっていうか、とりあえず4時間ぐらい」
「ほんなら金貰ってこい。恥ずかしーことやねーぞ」
「わかった」
「ちゃんとやぞ、貰いに行かへんかったら向こうの思うツボやぞ。働かせて辞めさせて金払わへんかったら、おめー、たーけやぞ。」
「わかったって」

 お金、貰いに行きませんでした。変なプライドみたいなもんが邪魔して…っていうか、どうしようもなくカッコ悪くてこっ恥ずかしくて。
 それから兄貴、一切そのことに触れませんでした。きっと行かなかったことをわかっていたんでしょう。

 ランチが1000円。ピザ屋で嫌な思いして何十枚も脂で汚れた皿洗って900円。
 1000円ってやっぱ高い。1000円ってやっぱ大金だ。1000円稼ぐのは大変なんだ。
 だから何って話だけど、いっつも当たり前に1000円のランチ食ってるけど、じゃ一体1000円って…という話をしたかっただけです。





こちとら創業年間。いや、日刊?



『ユーミン』

 ユーミンがすごく喜んでくれた。
「泣けました」ってコメントしてくれた。
 こっちも泣けてきた。
「ほんとにね、泣けたよ。ありがとね」って言ってくれた。 
 その場では泣かなかったけど、帰り道で泣いた、いや泣けた。

 深夜にひとりで「ユーミン・フィルムズ」を観た。
 やってよかったなって思って、はじめてホッとした。
 お礼を言いたいのは僕の方だ。
 
 仕事なのに、いろんなもの全部詰め込めました。
 ほんと、青春にはきりがないね。
 ユーミン、ありがとう。









『弱くなりました』

 最近は酒が弱くなった。昨日も久しぶりに近所の「マハカラ」で飲んでて、好物の麦焼酎が途中からバリウムのように喉を通らなくなった。
 少し前までは、酒量を誇るように飲んでいたが、いまではその勢いはどこかに消えた。人は、酒の量なんて自慢するもんじゃないよと言うが、なんでもかんでも自慢できるものを探して生きてきた僕にとって、酒の量は自分を誇示するための大切なものだった。
 酒を飲んでいる年数は30年以上になるが、さて酒の飲み方となると今でもさっぱりわからない。どこがちょうどいい塩梅なのかを探していたら旨い酒なんて飲めないし、かといって調子良くクイクイやると、気付いた時には道端で前屈みになっている。翌日には二度と酒なんか飲むものかと何百回思っただろうか…
 そもそもなんで酒を飲むんだろう?あんなもん、冷静に考えれば旨いわけがない。どんな料理やつまみに合うといったところで、味覚的に旨いはずがない。ということは、やはり気分的に旨いと感じているだけなのだろう。もっと言うなれば、酒を旨いと感じ入ってる自分に酔いしれているだけのことなのだろう。
 
 そんなことははなからわかっている。だけどついつい飲んでしまうのが酒なのだ。
 なんでこんなわかりきった話を書いたかと言うと、酒量が落ちて、“クリさんも豪快さがなくなりましたね〜”と言う声を耳にしてしまったからだ。その場では聞こえないふりをしていたけど、やはりズシンときた。「豪快」とか「軽快」とか「運動神経」とか「有頂天」とか「お調子者」というフレーズが大好きなのに、人にそんな風に冷静に呟かれたら、もうお役御免です。
 だからもう、ぼちぼち飲もうと思います。「豪快」や「有頂天」とはさよならして、普通のおじさんが小便をするように、ちょろちょろと申し訳なく飲みます。だから、知人友人先輩後輩のみなさん、僕をどこかで見かけても、“何々のモノマネやってくださいうよ〜”とか“何々の話聞かせてくださいよ〜”とか言わないで、挨拶程度ですませてください。
 僕も人を盛り上げるための酒はやめます。そんな体力なくなりました。

 これからが本当の、僕と酒のおつきあいです。
 ひとりで飲んだり、大切な人と飲んだり。
 ぽつりぽつりとしみじみ飲みます。
 
 だけど、物足りなくなって自分からスパークするようなことがあったら、そこはご愛嬌ということで勘弁してください。





泰明、ゆっくりいこう。



『ユーミン・フィルムズ』

 松任谷由実さんのニューアルバムの中から3曲を選んで、それに映像をつける「ソングドラマ」を作りました。
 これはプロモーションビデオとは一線を画す、いわば「聴く映画」というか「観る音楽」というかそんなコンセプトで、それぞれが15分程度の短編映像になっています。
 ユーミンの曲に心をぐらぐら揺さぶられた僕たちですが、ユーミン世代から少し離れた若者たちにどう届けるかを考えた結果、映像監督はすべて30前後の若い人たちにお願いしました。
 僕らがジャスト世代として受け入れていたユーミンの楽曲が、世代を超えて、今、どのような表現におとされるのか?それは僕たちがコントロールすべきものではなく、あくまで見守ることを前提にプロジェクトを進めていくことがキーワードでした。
 それがようやく完成しました。僕がここでアレコレ言うのはやめておきます。24日からYahoo!動画にて配信されますので、ぜひご覧頂きたいと思います。
 それと、10月24日発売のユーミンのニューアルバム『seasons colours -秋冬撰曲集-』のグラフィックのADとCDをやらせてもらいました。これは嬉しかったな。
 全国のいろんな駅やABC MARTに貼られますので、よければ見てください。
 さて明日は完成披露試写会です。
 なにより、ユーミンは喜んでくれるのだろうか?
 ヨシヨシって、あたま撫でられたい。





このアイコンもいいでしょ。



『インタビューという名の宇宙』

 昨日、30年以上憧れていた人と対談をしてきた。その頃僕はマセた小学生でその人は鳴り物入りの新人女優だった。

 親に隠れてその人が載っている雑誌を買って布団にもぐってグラビアと会話をした。からだだけではなく心までもぞもぞして、どこか僕の知らないところへ、もうひとりの僕が連れ出そうとしていた。
 やがて僕は東京という街へ連れ出され、いつしか45歳の大人になっていた。もちろんその人は僕よりも年上で誰もが憧れるレディーになられている。

 あの頃抱いた恋心とは少しだけちがう特別な気持ちは、たった30年ぐらいで色褪せるものではない。僕は、僕の隣にあの頃の僕を連れてきて、あの人と対談をした。
 もう親に内緒で布団を被りながら会話をしなくていい。今でも、いや今の方がもっともっと素敵になったあの人の瞳の真ん中をじっと見つめながら、その瞬間に思ったことを伝えればいい。そしてあの人も、じっと僕の目玉の真ん中に瞳をロックオンしてくれながら、唇を動かしてくれた。

 インタビュー。それは僕の大切な仕事。僕はインタビューがとても好きだ。インタビューに大切なのはテクニックではなく、気持ちを伝えることだ。そのときインタビューは会話となる。誰もが友だちや恋人や、他にも大切な人たちと話すときと同じように、なにかを伝えたいと思う気持ちを言葉にするのだ。そうすることでインタビューはとても大切なものをつくりだす生産工場となる。

 そして僕はそれをどこかの場所でそれを見てくれる人たちに伝える。ごくごくシンプルな作業をかけがえのないものにするためには、僕の気持ちを大切にすること以外には考えられない。
 もちろんメディアには伝えられないものも一杯あるけど、それがまた僕にとってはかけがえのない宝物になるのです。役得で申し訳ないけど、そういうものも含めてインタビューが好きなんです。





橋。5年前、確かここでPV撮りました。




2007/10/25

『1000円』

2007/10/24

『ユーミン』

2007/10/23

『弱くなりました』

2007/10/22

『ユーミン・フィルムズ』

2007/10/19

『インタビューという名の宇宙』
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