『衣類の行き場所』

 自宅の部屋を大掃除したら瀧のように着ない衣類が出てきた。毎度友人からフリマを勧められるが自分の中古品を売るのは気が引ける。考えれば古着もあまり買ったことがない。
 以前、企業のイベントでリサイカーズコレクションというものをやったことがある。人が必要としなくなった衣類を誰かが必要としてそれを買い取るというシステムで、とても意義深く気持ちよいものだった。友人のスタイリストを中心に毎回300点ほど集めいつも完売になった。売り上げをそれぞれスタイリストに返金して、彼らはまた洋服を購入し、そしてまたイベントへ。べらぼうに高価な洋服の健全な流れだと思っている。
 さて、我が家の膨大な衣類であるが、支援物資として送ることにした。そこそこに愛情を注いできたものが多いので自信を持って届けたい。東北の春はまだ遠いだろうからきっと役立ってくれると思う。
 
IMG_1494.jpg

ご近所のカフェ。気持ちが晴れる場所。



『4月』

 高校生の娘を持つ40をとうに越えた女性が神妙な顔つきでそっと呟いた。

 「あたし、再婚するんだ」
 うっそ、なんで、だれと…
 「だって…さ…」
 だってなんだよ?
 「聞きたい?」 
 まあな。
 「ぜったい言わない?」 
 いわねーよ。
 「ぜったいだよ!」
 だから言わないって。
 「あのね…今日はなんの日でしょう?」

 いい歳こいてひっかかってるオレって…。
 それにしてもこーいうの、めちゃくちゃ腹立つわ。

IMG_1492.jpg

昨日の写真の反対側。



『T女子、ヨガにて』

 マネージャーのT女子は日々のストレスを解放するために週末にフィットネスクラブでヨガをうけた。新種のアロマヨガというやつで、インストラクターが用意したアロマをハンカチみたいな布に滲みさせ、参加者たちに匂いを嗅がせながら回させその後にエクササイズするのだという。 
 T女子はアロマの匂いに心を奪われ、脳天からストレスが放出されるのを自覚したという。
 しばらくアロマを嗅ぎ、後ろの中年女性にハンカチを渡すと、中年女性は乱暴にピッとハンカチをもぎ取り、眉間にシワを寄せながら”おっそいわ!”と吐き捨てた。
 アロマで奪われた心は中年女性の態度で逆流し、ヨガスタジオに踏み入る前の約2倍のストレスがT女子を襲った。バツが悪いので途中でスタジオを抜けるわけにもいかず、中年女性の視線を背中で浴びながら、ストレス&プレッシャーヨガという、これまた新種のエクササイズをするハメになってしまったのである。
 ヨガが終了しても中年女性の言葉と眉間のシワが脳裏から離れず、悔しさと恐怖でその晩はなかなか寝付けなかったという。
 翌日の土曜日。昼を過ぎてもまだ脳裏には中年女性が…気分転換にT女子がチャリンコで買い物に出たところ、遥か前方から猛スピードで激チャリする女の姿が…そうです、あの中年女性だったのです。
 視線は一定に保ち腰から上を前方に45°傾け、そしてやはり眉間には強烈なシワが。歩道を猛スピードで走り、歩行者などおかまいなしてベルを鳴らし続けながら神風のように走り去ったという。
 T女子によれば、髪はアフロ気味のソバージュ、カラーは下品で安っぽいなブラウン、びっくりするぐらいにブルーのアイラインを引き、梅干しをつぶしたような色のルージュをひいて、そしてエブリタイム眉間ジワ。場末のスナックのママではないかとの想像だが、T女子曰く、「結構カネ持ってそうだから、代々続く土地成金に嫁いだ鬼嫁かもよ!」だそう。
 なんでカネ持ってると思うの?と問いかけたら、「わりと新しメの電動自転車乗ってたし。あれ、ディスカウント屋でも15万はするよ」と緻密な分析まで披露してくれた。
 さらに「わたし、アレ、欲しいんだけど…」と軽く猫なで声。
 
 心揺れる女子の日常。わたしはこんな話を聞くのがなによりも好きです。
 
IMG_1491.jpg

たった今、広くなった事務所というか教室。



『深夜のチャーリー』

 深夜にチャリ転がしてるとほとんどと言っていいほどポリさんに止められる。前方100メートルにポリさん発見した瞬間からゆーうつになってくる。予感はポリさんにも伝染し、”あー、もしもし、ちょっとスミマセン”となる。
 職質っぽくて腹が立つが、無視すると厄介になるからしばらくお付き合いする。防犯登録を調べ所有者確認をそれらしくして、”ではお気をつけてお帰りください!”である。ほんとーにめんどくさいし、いいリズムで走ってたのにまた一からリズムの作り直しである。

 そして俺は見つけた、止められない術を。
 ポリさんを発見したら、こちらから”お疲れさまでーす”と元気いっぱいに声をかけてやるのだ。不意をつかれたポリさんは”ど、どうも”としか切り返せない。節電で中国よろしく自転車が氾濫する都会の深夜、せめてポリさんぐらいスルーしたいものである。
 いちお報告しとくが、今んところ3戦全勝。無敗のヒクソングレーシーなのだ。
 



『支援のありかた』

 不謹慎。自粛。この意味を、今いちど考えるべきである。やろうとすること、やるはずだったことがすべて無くなれば経済効果は得られず、義援金等の復興支援にも支障をきたす。
 仕事そのものが「不謹慎」ととられる会社だってある。自粛ムードが行き過ぎて、不謹慎の意味があらぬ方向へいってしまったら、経済で保たれていたこの国の機能は完全に麻痺してしまうだろう。
 どこからが不謹慎でどこまでが適正か。その線引きは難しいが、自粛という言葉の呪縛にあい、人そのものが社会の中で機能しなくなれば、それこそが多大なる二次被害である。
 日々のことを真摯にやりとげ、そして復興に支援する。仕事も支援の一種であることを我々は肝に命じるべきである。
 




2011/04/03

『衣類の行き場所』

2011/04/01

『4月』

2011/03/31

『T女子、ヨガにて』

2011/03/30

『深夜のチャーリー』

2011/03/29

『支援のありかた』
このサイトに掲載のイラスト
写真・文章の無断転載を禁じます

Copyright © 2001-2010 MaroonBrand