『栗山商店にて』

 戦後間もない頃の闇市的な商店街を発見した。興味津々になり中を覗き込んでみると「栗山商店」という看板が掛かっていたので失礼して写メったら、白髪の老人が出てきて”なんか用事かな?”と言われた。
 なんか隠し撮りした気になり少しだけ後ろめたさもあってか、取り乱して”いや、看板に栗山商店と書いてあったので…あ、ボク、栗山です”と冴えない言い訳をしてしまった。
 すると老人は、”ふむ。まぁ、入んなさい”と手招きをして、年季の入った栗山商店に入れてくれた。
 老人は、ヤカンから湯呑みにお茶を注いでくれた。”つーと、目黒の人かね”。どうやら栗山性は東京では目黒に多いらしく、しかも皆、かなりの土地持ちらしい。
 ”いえ、岐阜です”と答えると、”そーか、長良川か。わしゃ鮎釣りが好きでな、ほれ、そこに飾ってある写真、あれ長良川じゃ”と教えてくれた。よく見ると額縁の隅っこに「四万十川にて」と書いてあったがトボけてみた。
 それから2時間、老人はいろんな話を無理やり岐阜につなげて話してくれたが、どれも微妙に岐阜とはズレていた。けれどその心遣いというか気配りというか、お茶も3杯も煎れてくれたし、なんだか本当に田舎に帰ったような気になった。

 しばらくすると、近所に住む警察官が私服で登場し、会話に混ざった。大阪出身の元バレーボール選手で、彼の同年代のスタープレーヤーやその頃強かったチームの話をしたり、さらには彼の出身地の有名人や名所旧跡を言い当てたらかなり喜んでくれて、それを見ていた老人が”やっぱり思った通りの男じゃ”と言った。

 どれもこれもなんてことない話だけれど、ものすごい晴れやかな気持ちになったのはなぜだろう。
 きっと、そんななんてことないことが会話でありコミュニケーションであり人付き合いであり近所付き合いで、なにより触れ合いなのだろう。そんなことをふと…

 同じ名字だけで花が咲く。”思った通りの男じゃ”か。悪くない昼下がりだった。



『日本一辛い担々麺』

 三宿『豆金』。猛烈に辛い。真っ赤な生地の「赤餃子」、唐辛子100本入りの「日本一辛い担々麺」は、どんぶりを覗き込むだけで目が痛い。「辛みもやし」「麻婆豆腐」、もちろん辛い。だが、かなりマイウ。辛くて美味いのは本当に困る。翌朝の黄門様のご様子が明白だからである。
 HOSUのスーさんは強気である。明日は明日の風が吹くとおっしゃる。そして合計9名内イタリア人1名で担々麺を肝試しする。意外にもイタリア人は根性入りまくりで、流暢な日本語で「これもご縁ですから、お出しいただいた物はすべて平らげないと」と言って、目が痛いスープをズズッとやった。あいつは凄い、青い目をしたサムライだ。
 そして黒い目をした侍たちは、ムリムリムリムリと軽薄なギャル語を使って担々麺を回避する。そんなことだからカズはバレージに顔面骨折させられたのだ(古い話ですまん)。
 その担々麺は新番組のドラマのPRに奔走する某有名俳優の黄門様も泣かせた。ただ、泣いた者にこそ、その醍醐味は分かるもの。つまりクセになるというやつだ。
 人はその琴線をくすぐられるのが弱い。痛いと分かっていてもついついプリーズしてしまう。それがエスカレートすると『変態』というジャンルに昇格するが、ちょっと痛かったり辛かったりみっともなかったりイジメられたりするのが実は快楽なのである。
 実は私もまだヒリヒリする黄門様をさすりながら、すでに担々麺のことで頭がいっぱいなのである。



『腰痛い日のお話』

 昨日のゴルフで痛めた腰が思った以上に重傷で、朝、布団から起き上がることも困難だった。大体2日目に来るのね、腰痛のクライマックスは。人生のクライマックスはまだまだだけど、腰痛に関しては確実にフタケタを数えた。
 最初は高3の夏。県高校総体前日に友人とトランプで「大貧民」やってる最中に初めてのギックリ腰。で、100メートルと走り幅跳びとリレーを棄権。最終的にそれが高校最後の大会となった。
 4回目のクライマックスは25歳の秋。夜テレビで「鬼龍院花子の生涯」を観ている最中にギクッ。次の日の午後まで動けず、アパートの大家さんに合鍵で外から開けてもらい救急車を読んでもらって即入院。そのまま3週間、大部屋の住人となった。
 
 そして今朝、もう何度も経験しているので予想はしていたけど、それでも激痛に絶えられず、「神の針」とオレが勝手に呼んでいる鍼灸院の先生にプリーズして1時間「神」を打ち込んでもらった。
 すると棒状に引きずっていた足は膝から折れ曲がり、ちゃんとした人間の歩き方に戻った。
 そりゃまだ痛い。魔法じゃないんだから痛みが急に消えるなんてこたーないけど、たった1時間で300メートルも歩けるようになったのである。ひと針300メートル。先生の針はグリコのようだ。
 今日はずっと原稿書く日。ときどきハーマンミラーから腰をあげて、キュッキュッ。これだけで腰は喜び筋肉や関節も笑顔になる。
 猫のあくび&伸び。これは人間に置き換えてもストレッチとリラクゼーションの基本である。
 気持ち切り替えるときは猫のポーズ。OLさんがオフィスでやったらさぞセクシーだろうね。

 



『ホールインワン!』

 Mがホールンインワンを出した。もう大騒ぎである。テレビで観るものとは違って切り立った傾斜を利用したクッションボールが生まれたばかりのひな鳥のように、フラッグに向かってヨチヨチヨチ、そして…コロリ。そのシーンはスローモーションのようで、場面を見守ったオレとKとK山さんは、一瞬だけ息を止めてから、ありったけの声で大爆発! イヤッホー! ブラボー! ウェ〜イィ! どんな言葉でもかまわないが最後に必ず「!」を付けてカラダをぶつけ合ってフィーバーしたのである。
 本来ならOBになろうかという打球をホールインワンにするMの幸運に乗っかろうとみんなで記念ボールをナデナデすると、あら不思議、バーディなんか滅多にとったことないオレとKにもバーディが舞い降りて、しかもKに至っては後ろから飛んで来た打球が肩甲骨を直撃してもんどりうってぶっ倒れたりと、何かとお騒がせなゴルフだったのである。
 それにしてもK、骨折しているかもしれないのに18ホールを回り切るとはよほどの根性かあるいはストレスのせいだろう。人はゴルフ場に立つと人格が出ると言われるが、Kの根性は並大抵のものではないことを確信した。きっと50になったら大成するに違いない。それは傾斜を転がるボールがピンに向かって真っすぐ軌道を進めるように、思わぬ瞬間に訪れるだろう。

 ということでこんなゴルフもあるのだよ、という話でした。
(実はオレもギックリ腰になり、自力でクツをはけない情けない状態になってます)
 

 



『歯、ぽきっ!』

 飴を噛んだら歯が折れた。それまではクルミをガリガリやってもビクともしなかった上の歯が、ゴキっと音をたててベロの上に転げ落ちた。飴ごときで折れるとは情けねー限りである。
 歯の成分はほとんどがカルシウムである。ということは、この調子で骨まで弱っているのだろうか。骨粗鬆症とかなんとか早口言葉みたいな症状で、石ころ踏んづけた程度でもポキッといってしまうのだろうか。
 あんまり悔しかったので行きつけの店へ行ってグチ聞いてもらおうしたら、奇遇にもオレの歯を砕いた飴を売ってる飴屋の社長がやってきたので、”お前んとこの飴で歯が折れたぞ!”と怒ったら、”飴はナメるもんでっせ”と軽ぅ〜くいなされた。
 ちきしょー、もう飴、噛まん。
 ちなみに折れた歯は記念に持って帰った。




2010/11/12

『栗山商店にて』

2010/11/11

『日本一辛い担々麺』

2010/11/10

『腰痛い日のお話』

2010/11/09

『ホールインワン!』

2010/11/06

『歯、ぽきっ!』
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