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深夜の事務所はとてつもなく静か。眼下の山手通りには昼から絶え間なく車が走り続けるが、その風を切る音とタイヤが路面を蹴る音が余計にさびしい。
昔は深夜を待ちわびていた。ラジオの向こう側にある東京を感じるために息をひそめて聴き入っていた。
ノイズに邪魔されないようにスピーカーに耳を近づけて、そうすることで東京がより近くになった。
あの頃のパーソナリティの子供と同じかそれよりも年下の世代が、あの頃と同じ番組で喋っている。地方の中高生にとってパーソナリティは憧れの存在で世の中でいちばん相談できる人。顔も知らない誰かから送られてきた葉書の内容に、うんうんと頷き、我が事のように心にしまい込む。
時代が変わり葉書がメールにかわっても綴られる思いはかわらない。「恋」と「ともだち」と「夢」と「勉強」と「好き」と「嫌い」、ときどき「親」。青春の悩みはいつの時代もおんなじだ。
リスナーよりちょっとだけ年上のパーソナリティが悩みを軽くしてあげるように精一杯背伸びをして喋っている。これも昔から変わらない。昔は頼もしかったパーソナリティの喋りが、自分が年をとったせいか、なんだか可愛く思えてしかたない。
久しぶりに聴いたオールナイトニッポン。昔となんにも変わらないなと少しだけ嬉しい気持ちになりながら聴いた。どこかの中学生から届いたメールに書かれてある他愛もない恋愛相談になぜかドキドキした。気がつけば20歳ちかくも年下のパーソナリティのアドバイスを息を潜めながら聴いている俺。
そういう悩みの結末はきっとこんなカンジ……と人生経験の引き出しを開けながら…でもパーソナリティがどんな言葉を添えるのかを期待する俺。
いつしかクルマの音は心を穏やかにさせるメトロノームになっていた。
青春かぁ。いーなー。葉書出そ。
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