『男のチャーハン』

 炒飯を余り物で作る。男の料理はこれだけできればほぼOKだ。厨房男子なる者もいるが、それはそれでよし。カレーも作れるが相当気合いが入るから、はいよ!とはいかない。
 炒飯の決め手は味付けである。どんな条件下でも味付けにブレがあってはならない。ベーコンから出る脂で野菜を焼き、しょうゆと酒でジュワーっとやり、バターちょびっとにブラックペッパーぱっぱで完成。冷蔵庫で放置され賞味期限と消費期限のあいだを彷徨っていた食材たち。このまま放置され続ければ生ゴミとなる以外に道はない食材がふたたび皿の上で輝きを放つとき、オレの額の汗も美しくきらめく。
 調子に乗って高めの鶏肉とかを使ってはいけない。そんなことをしたら炒飯のありがたみがなくなってしまう。あくまで冷蔵庫で行き場をなくした食材達のリーサルウェポンとして、炒飯は機能するのである。もちろんごはんも、3日前に残ってしまったカッチカチなやつ。冷蔵庫から出したばかりの冷えごはんは必ずチンする。熱してホクホクにして一粒一粒に勢いを出してキレをよくするのだ。そうなると味のノリが冴え。歯ごたえも復活する。
 残ったベーコンはスープに。カリッと焼いてからコンソメ汁の中にダイブさせ、ごま油をちょぽんと落として完成。
 キャベツか白菜が余ったら、これもチンして塩コショウで食べる。時にしょうゆマヨや、名古屋人御用達の「つけてみそかけてみそ」のジャンクなソースもかなりイケる。
 “食ったー”のひと言で深夜の晩餐はシメを迎える。実に男らしいことを言いながら、ケンタロウの料理本を3冊も持っているのである。



『プールではずかし』

 気合いを入れてスポーツクラブのプールに行ったら、インストラクターが揃って水を抜いたプールをタワシでゴシゴシ洗っていた。俺だけ競泳用パンツ、スイムキャップ&ゴーグル。会員は誰もいない。当然インストラクター達の視線が突き刺さる。ほぼ裸の状態だから余計に痛い。
 ああいう時って、どちらも一瞬「え?」って感じで固まってしまうんだな。口ぽかんと開けたまま、「なんで」とか「どうして」じゃなく、「え?」って。
 おそらくチーフ的な人だと思うけど、“あのう、今日はプール清掃日なのでプールはご利用できません。申し訳ございません”と頭を下げられたけど、丁寧な対応をされればされるほど恥ずかしさがアップして、照れ隠しに「だよね~」と平然とした顔して明るく振る舞ってみたけど、絶対動揺してるのバレたな。
 ドッキリ番組で、温泉からウォータースライダーでスキー場に真っ裸で飛び出してく芸人のはずかしめがちょっと分かった気がした。
 落ち込んで階段を下りて行ったら、ビキニパンツで泳ぐ気満々のおじさんとすれ違ったけど、そのまま素通りした。



『たまらん夏』

 この夏はテロテロコットンのタンクトップタイプのワンピースを着ている女性に出逢う。といっても、通り過ぎて後ろ髪をひかれるだけだが。オレはこのテのファッションにめっぽう弱い。開放感というかおウチ感というかコンビニファッションというか彼と彼女の距離感というか、玄関の扉を開けっ放しにしてドライヤーで髪を乾かしているような油断感みたいなところに心惹かれるのである。
 足元は決まってローヒールのサンダルで、グラデーションの大きめのサングラスをかけて、麦わらで編んだようなチープシックな買い物かごを引っ掛けて…完全に負けた感じがする。何に対して負けたのかわからないが、無防備すぎて逆に挑発されているような罠にまんまとかかってしまうのである。
 女たちはそれを知っている。してやったりの表情はグラデーションの奥にそっと隠しているが、“またひとり 飛んで火に入る バカなやつ”と、鼻先で川柳を詠みながら通り過ぎて行くのである。
 このファッションはルックスを問わない。スレンダーでもぽっちゃりでもマンモスぽっちゃりでも不思議と色気が放出されるのだ。さらに無防備な女性は後ろ姿に逆三角形のラインがうっすらと滲むのである。
 路上で立ち止まっている男は、きっとその残像をリフレインさせているか暑さのせいでいつも通っている道を迷ってしまったかのどちらかである。
 暑いのはたまらんが、違う意味でもたまらんのである。

 みなさま、良いお盆をお過ごしください。



『水場』
 マハカラの入り口に水場をつくった。野菜やラムネなんかを冷やしておく涼場である。
 郡上八幡を旅した時、売店の軒先にすいかやトマトを冷やしてあるのを思いだして、急遽、アレ作ろう!ということになり、早速大工仕事でやっつけたのだ。
 入り口には水場と柄杓と手ぬぐい、南部鉄の風鈴、ブタ蚊取りとすだれ、そして呼び鈴。これで2010年夏、完成である。
 なんか夏休みの工作をしているようで楽しかったが、オレが塗った部分のニスだけは相当いただけない結果になっている。何を隠そう、プラモデルづくり大嫌い、日曜大工興味なし、のこぎりで木を切る前に気持ちが切れてしまうオレである。そんなオレが中目黒の涼場のためにせっせとニスを塗ったのだ。愛情と気合いだけは水の中に溶け込んでいる。どうか通りがかったら柄杓で魂の水をすくって涼をとっていただきたい。
 とりあえす盆明けからトマトとスイカとラムネ冷やします。盗むなよ!




ギコギコ、ブィーン。



ココがこうで。



できた。



ジャーン。





『バカな知り合い』

 遠方にいる知り合いが電話をして来た。

 「明日東京に行くんですが、5時頃お時間空いてますか?」

 「おお、なんとかするよ」

 「じゃ僕の都合が合えばお会いしたいです」

 そいつとは未だ「知り合い」止まりである。




2010/08/18

『男のチャーハン』

2010/08/17

『プールではずかし』

2010/08/13

『たまらん夏』

2010/08/12

『水場』

2010/08/11

『バカな知り合い』
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