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頭のてっぺんからつま先まで。さらに帽子からメガネからカバンまでこの30数年間でありとあらゆる買い物をしてきた。物持ちの良い俺のクローゼットは悲鳴を上げて洋服がせんべいのようになっている。
洋服をひとつひとつ手に取ってはいろんな思い出が蘇ってくる。不思議な事に俺は、「あの頃」を思い出すだけでその時のコーディネイトがはっきり思い出せる特技がある。
甘く切ない恋の瞬間だけでなく、中学時代にお祭りでケンカしたときも、小学校のときに名古屋まで自転車で行ったときも、すべてどんな洋服を着ていたか明確に記憶している。
アルバムをめくり自分の記憶を写真と照らし合わせながら「やっぱすげぇ、俺の記憶力」なんて小さくオレ自慢してみたりもする。
さすがに中学高校時代の洋服は着れなくなって誰かにあげてしまったが、それでもしぶとく何十年も俺の傍を離れたがらないアイテムたちを眺めながら甦る記憶を楽しんでいたら、27年前に買ったピーターストーンのオイルドセーターの中からひょっこりと紺色の手袋が顔を出した。
おぉ、中3の時に地元の『FIVE』で買った『VAN』の手袋! ここにいたのか…
この手袋だけはどれだけメタボになろうがサイズ的には問題なく40を過ぎても俺のゴッドハンドを温めてくれた相棒である。ところが知らないうちに家出をして(って家の中にあったけど)捜索願を出すぐらいの勢いだった。よりによってもう20年以上も着ていないセーターの中から出てくるとは。しかも30年前の『BEAMS』の紙袋にキチンと入っていたからたまげた。きっと手袋も幼なじみの洋服と積もる話があったのだろう。
考えてみれば手袋ってコレしか持っていない。30数年、ずっとコレ一個。よくがむばってくれた。ありがとう。そんなことを思っていた昨年の12月、ミトンタイプの千鳥格子のニット手袋を頂いた。
32年選手から新人へ。箱根駅伝のごとくタスキは繋がれる。この手袋もさまざまなシーンを演出してくれるのだろう。
そこで懐かしのおあそび。
「手袋巡査」を反対から言ってみて!
てぶくろじゅんさ…さんじゅうろくぶて…
ポカポカポカっ。
いててて…
上/新人手袋 下/32年の大ベテラン
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