『恋人たちの山手線』

 山手線で男女が人目を憚らずイチャイチャしていた。それはそれは恥ずかしくなるぐらいの勢いで、この調子だと脚でも絡ませるんじゃないかと思うほど。隣のサラリーマンはプレッシャーを感じたのだろうか、銀縁メガネが曇ってしまった。
 イチャイチャが少しおさまった。どうやら彼氏が先に下車するらしい。
 プシュー。彼が降りた。降車扉が閉まり彼がガラス窓の向こうに寂しそうに突っ立っている。
 彼女もなんだか寂しそうだが右手はトートバッグの中をゴソゴソしている。微かに聞こえる呼び出し音。発車のベルが鳴る。名残惜しそうに彼が手を振っている。昔のJR東海のコマーシャルみたいだ。
 彼女は右手をトートに入れたまま慣れない左手で彼に手を振る(そんな感じだった)。
 電車が動き、彼の姿が遠くなった途端、「もしもしぃ、ごめん、電車。ううん、ひとり。そんなわけないじゃん、もう。今向かってるとこだから。待っててね♡ じゃ切るね」
 電話の相手が誰かは分からないが、彼女の半径3メートル以内の人々は、なんかいやーな想像をしたに違いない。その証拠にサラリーマンの銀縁メガネは濃霧のようになっていた。
 先に下車した彼はどんな思いで改札を抜けたのだろう。ルンルン気分でスキップ&ジャンプなんかしてたら……ダメだ、想像しただけで悲しくなる。



『朝青龍のいない大相撲』

 朝青龍が引退してクリープを入れない珈琲を飲むような気持ちで相撲を観ている。主役がいないのは本当に寂しいものだ。たとえヒールであれ朝青龍はスーパースターだった。大相撲熱の高い大阪府立体育会館も空席が目立つ。永谷園も懸賞金の賭け甲斐がなくなってしまったことだろう。いつもは制限時間いっぱいになると、お尻の穴がギュッと引き締まったが今場所は締まりが悪い。目もしょぼしょぼする。これは花粉症のせいだろうから多分関係ない。今場所13勝すれば大関に昇進できる把瑠都が目玉だが、レディース暴走族のチーム名かあるいはヤンキー上がりのおじさんが経営しているスナックの名前みたいでどうも気持ちがしょげる。
 そもそも最近の相撲は外国人力士がごったがえしてつまらない。カラダがでかすぎて大味な取り組みばかりが目立つからである。
 立ち合いで相手の勢いを止めたらあとは長い腕で肩越しにまわしを掴んで、強引に引きつけて寄るかグイングイン振り回すだけ。それをさせないのが朝青龍と日馬富士だった。ふたりの相撲はスピードとスリルに溢れ、おのずと肛門様がギュッとなった。
 あぁあ朝青龍、なんで辞めちゃった(辞めさせられちゃった)んだろ。もうあの運動神経の塊のような相撲が見られないと思うと誠に残念である。頭の堅いご意見番たちは「横綱は強ければいいというだけではない」と言うが、そこそこの横綱が多い相撲界の歴史で、あれだけ圧倒的に強い横綱はいなかった。確かにいろいろ問題はあっただろうが、朝青龍だけが悪いわけではなく協会そのものにも問題はあった。立場上というか、朝青龍に辞めてもらうしかなかったというのが本音じゃなかっただろうか。その前に彼をあんな風にしてしまったのは、どこの誰? それを見張るのは誰だったのかを考えるべきである。
 モンゴルでの朝青龍の発言もよくなかったが、こうなれば水と油。事件はどんどん茶番化していく。正直、よくぞ朝青龍は相撲界でここまでやって来れたとしか言いようがない。
 相撲好きの俺の楽しみときたら、いつ壊れるかわからない魁皇の哀愁ある相撲に声援を送るだけ。37歳満身創痍。若貴、曙と同期生。ライバルたちがちゃんこ屋や格闘家になり、もうひとりのライバルは土俵の下から見上げている。かつてのライバルたちはひとり残った同期生の土俵をどんな思いで見ているのだろう。白鳳が年間86勝する中、魁皇の相撲は勝ち越しがどれだけ大変かを教えてくれる人生劇場のようなものである。
 俺の人生もなんとか勝ち越したいものである。毎日毎日、良いことと悪いことがある中で、8勝7敗。これぐらいがちょうどいい。




仕事仲間が目を掻いた。朝青龍かと思った。




『新高校生諸君!』

 3月も半ばにくるとさすがに春だね。鼻の機能はほぼ全滅だが、それでも春の匂いを感じる。ややなまぬるい風が前髪をさらさらやると、こちょばゆくてたまらん。
 4月から高校生になるやつらは悪さを覚える頃だね。「高校生」という響きになんか背伸びしなきゃいけないような気がして、単純な奴は非行に走ってしまうのだ。中学を卒業して春休みを過ごしてるだけなのに、なんか大人にならなきゃいけないって気持ちあったなぁ。一番わかりやすい方法が「大人のフリをする」ということで、すんなり喫煙の世界へ入り込んでいく奴が多い。そうすると急に大人になった気がして髪の毛がどうだ服装がどうだ、眉毛なんて毛糸よりも細くしちゃって、それがニキビ面に似合わないことこの上なしで、しかも基本的にニキビがあるだけで肌はツヤツヤだから余計ヘン。ま、痛い思いも早いうちがいいので、早めに叱られるのも悪くはないと思う。ただ、グレはじめたらそのまま何十年も一直線となると、本当に大人になってから苦労するので気をつけた方がいいと思う。
 高校入学時、高1の夏休み、高1の春休み、このあたりが不良生産のラッシュアワーだな。それでも中学から頑張ってる奴らからすれば「遅咲き」とバカにされるだろうけど、まして高2を過ぎてから頑張り出すやつは「今頃からデビューしなくてもいいのに」と相当冷ややかな目で見られるから注意した方がいい。
 新高校生諸君には、そのニキビの中に詰まった悶々とした気持ちや好奇心を、どうか健やかな手段でスパークさせてほしい。そう思うと、やっぱ部活がいいぞ。恋はちょっと間違うと大変なことになる。それは大人になってもそうだ。だから部活。部活を知った者だけが、大人になっても部活ができる。やがてわかるさ。




中目。満点の青ぞら。さくら咲きそう。




『キトキトとやま』
 2日間、とやま県のことを書いたけれど、なんで富山?ということを説明していなかった。
 4月13日から12日間、丸の内ハウスで『キトキトとやま 丸の内クルージング』というイベントするためのロケハンというか視察だったのです。
 1泊だけの短い旅でしたが、それでも10数ヵ所の『ザ・とやま』を巡ったでしょうか。睡眠時間の4倍は食ってるか飲んでるかでした。
 食というのは本当に素晴らしい。酒や料理をほうばると、口の中でその土地の文化や歴史や暮らしが咀嚼(そしゃく)されるみたいなのです。この素材がある町だからこの味が生まれ、この味と相性を考えてこの酒が誕生したのだろう。想像が実感に変わる時ほどスリリングで幸福な瞬間はない。
 連峰と海を眺め、山からの風と海からの風に打たれ、人に触れ、土地の匂いを知る。知ったうえで、土地の宝を口に含む。「うまいだろう」が「うまい!」になるとき、僕のアクセルはフルスロットルになる。
 日本にはまだまだ知らない場所が多すぎる。知らないことはもったいないことである。すこしでも「もったいない」を少なくするために、列島のいろんなところに足を運んで僕なりにそれぞれの土地にリボンをかけてあげたい。
 とやまの『キトキト』と言う言葉は、「新鮮、イキがいい」という表現。土地土地のいろんな方言に触れ、土地ならではのイキの良さを、もっともっと知りたくなった好奇心満載の富山旅だった。




とやまえき




若き杜氏。しぼりたての酒。




ガラス工房の7つ道具。




くすり屋。




若き杜氏その弐。しぼりたての酒その弐。




酵母たっぷりの樽にいわしをつけ込み、重石をする。
やがて糠いわしが完成。




高岡の大仏さん。かなりイケメン。





『氷見にて』

 氷見という町に来ています。朝から蔵元さんにお邪魔して、しぼりたてのお酒をいただいて、そのあとはなんとも心温まる煮干しのお店で、今まで食べたことない珍味でおもてなしいただいた。
とにかく心が温かいのである。もっとほかの言葉で形容したいのだが、どうにも見当たらない。
自分がタレントだったらウルルンが「田舎に泊まろう!」で訪ねて、エンディングで再会を誓って号泣したいご家庭である。
 氷見市はわが故郷・関市と姉妹都市だと聞いてさらに親近感がわいた。
 なんちゅう素敵な旅なんやろ、と方言でしみじみ。 幸せな気持ちは長生きの秘訣であることが、いやがうえにもわかった。
昼ご飯はホタルイカのゆくぐり。いわゆるしゃぶしゃぶをいただいた。びびりましたのでありMAX。




煮干しの店の父さん母さん。





2010/03/17

『恋人たちの山手線』

2010/03/16

『朝青龍のいない大相撲』

2010/03/15

『新高校生諸君!』

2010/03/12

『キトキトとやま』

2010/03/11

『氷見にて』
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