『プールの頑固じじい』

 少し身体が丸くなってきたので、ぼちぼちとジムに通いだした。ジムと言ってもプールね。それも泳ぎメインではなく水中ウォーキングをメインに、泳ぐのはほんの500メートルぐらい。
 プールにはウォーキング専用のコースがあって、ほぼ人生の大先輩たちが占拠しているのですが、さすが太平洋戦争を経験しているような大先輩方は規則にうるさいのである。
 ウォーキングコースは基本的には右側通行になっていて、25メートルを歩いて壁にタッチしたらターンしてまた右側通行で戻ってくるという具合。要するに長い楕円を描くようにグルグルと回遊するようにウォークするシステムになっている。
 その日僕は、大先輩方で込み合うウォーキングコースにいた。僕の前のご夫人の大先輩のスピードが遅かったので、「すみません」と一声かけてご夫人の左側から追い越しをかけると、前から鬼の形相をした男性の大先輩が、「こらーっ! 君っ、右側通行というのがわからんのかっ!」と一喝された。
 「すみません、ご迷惑にならないように追い越しをしたのですが…」と言うと、「結果的に君は左側車線にはみ出しているではないか。それは反対側を歩く者にとって迷惑であり規則違反である!」と、大声を出されたのでシュンとしてしまった。もっともどこが『車線』なのかわかんなかったが意味は通じたのでツッコむのを避けた。
 僕が大先輩に叱られるのを見て、追い越されたご夫人は「お気の毒に。あの人、頑固で有名な方なんですのよ」と言って、微笑みながらスナップを利かせて右手を手前にパタッと倒してくれたので少しだけ救われた気持ちになった。
 ご夫人に一礼してから、気を取り直してウォーキングを再会すると、なんとあの頑固な大先輩が僕と同じ「車線」(早速使わせていただいた)を僕に向かって直進してくるではないか。それじゃ話が違うだろ大先輩。あんたも反対車線歩いてんじゃん、って言おうと思った瞬間、大先輩はクルッと背中を向けて僕と同じ進行方向に歩き出した。なるほど、これなら一瞬にしてルール通りの通行になる。なかなかやるじゃないか大先輩と思い、僕は少しスピードをあげて大先輩に近づき、やっとのことで追いつきそして大先輩が壁にタッチしてターンする寸前に、左のコースに飛び出し大先輩とぶつかる3メートルぐらい手前で、カラダをクルッと返し、背中に何かを感じながらも何食わぬ顔でウォーキングを続けたのであった。
 先ほどのご夫人が僕の勇気ある反撃を見ていたらしく、すれ違いざまに、「やりますわね」とエールを送ってくれた。
 ただ、いつか自分もあんな頑固で勝手なじいさんになるんだろうなと思うと、やりきれなくなってしまった。



『マッチ30周年』

 きのうマッチのコンサートに行って来た。近藤真彦30周年記念コンサート in 武道館。初マッチ、いろんな意味で興味深かった。
 もう30年なんですね、マッチ。マガジンハウスで仕事しているときに、当時の月刊平凡のジャニーズ担当だったSさんから、たのきんトリオ結成の話からSMAP誕生まで、他にもいろんな話を聞き、かなりジャニーズには関心を持っていて、特に『たのきん』とはほぼ同世代で、なんか自分の蒼い時期をほじくり返されるようでくすぐったいやら痛いやら。けれどそこにキュンとくる感覚があったので、根掘り葉堀り聞きまくっていてかなりの事情通になっていたのだが、実際にマッチには会ったこともなく、昨日はじめて足を運んだのである。
 トシちゃんは14年ぐらい前、サッカーの前園や中田たちと六本木のカラオケバーで飲んでいたら、キング・カズがディナーショウ終わりのトシちゃんを連れて来て、なんとなくご一緒させていただいた記憶がある。確かそのとき、トシちゃんは『夏ざかりほの字組』を歌ってくれて、ソファでジャンプしてシャンデリアに頭ぶつけてたような(しかもプーマのジャージだった)…。それさえもサマになるスターだった。
 さてマッチ、やっぱり凄かった。マッチと言えば黒柳徹子さんであるが、やっぱり観客としていらっしゃってて、モニターに映し出されたときには、何か熱いものが込みあげてきた。
 僕は2階席の最後部で観ていたのだが、周りのファンの方もそれなりに僕ら世代の女性が多くて…。けれど、みんなどうかしちまったぐらいにはしゃいでしまって、この寒いのにジャケットを脱ぎ捨てて、振り袖つきの二の腕をぷるぷるさせながら、「ケッジッメー」ってフィーバーしてた。いつまでたってもケジメつけられないのがファンというものなんだろうね。そこがまた切なくて胸を打つ。しかもその振り付けが昨日今日練習したようなハリボテじゃなくて、日舞の名取のようなしなやかな流れができてて、つまりモノホンなのです。その瞬間、彼女たち、少女に戻ってるんですよ。時計の針を反対に回して目なんかキラッキラ。そう2時間だけ好き勝手に戻りたい自分に戻ってるの。
 最後部から声が飛ぶ。「マッチー、あなたがいたから私でいられたのぉ~」。泣けた。そしてマッチが叫ぶ。「これからもまだまだマッチやりま~す!」。また泣けた。
 なんで泣けるの?なんて野暮なこと聞いてくる鈍感な人とは話す気になれない。それが昭和のアイドル歌謡というものなのだから。
 僕の前の席の4つ隣の席のご男性、全曲口ずさんでた。めちゃくちゃ真面目そうなお顔と髪型と銀縁メガネで、コクコクと頷きながら、時に天井を仰いで。
 大好きだったんだろうな、マッチのこと。あの頃は今と違って、男が男性アイドルのことを堂々と「好き」と言えない時代だったけど、もうへっちゃらなんだろうね。そうじゃなきゃ自分の青春時代を否定する事になっちゃうもんな。そんなことも横目に見ながら、感慨深い2時間を過ごさせてもらったのでした。ありがとう、マッチ。できることなら「くっろやなぎさぁ~んっ!」って、首を肩に傾けて親指突き上げて言ってほしかった。




マッチ30周年キラキラ。




『チョコプリン』

 バレンタインデーですね。昔よりも盛り上がりに欠けてるなと思うのは、部外者になったからだろうか。中学高校時代は授業が終わるたびにそわそわして靴箱を見に行ったりしていたけど、高校卒業したら急に冷めたな。そのうちに義理チョコっていうわけのわからん風習ができてドッチラけた。義理でもらうもんかな、チョコって。もらってしまうとホワイトデーという、またわけわからん日に出費がかさんで、ママゴトみたいなことが2ヶ月も続くので、ちょっと鬱陶しく思ってたが、今年のバレンタインはそうも言ってられなくなった。
 マハカラでバレンタイン用のチョコプリンが完成したのだ。すでに2月から発売しているから、今更なんだよ、ということではあるけれど…
 先週末のグラビア撮影現場に持って行ったら、某有名女優チョコプリンとうれしいプリンを同時に食べて、こと細かにうれしい感想を聞かせてくれたので、これはイケる!とMUP隊(マハカラ うれしい プリン隊)に報告してあげた後、バレンタインチョコプリンキャンペーンが繰り広げられることになった(※キャンペーンといってもみんなで“エイ エイ オー!”と雄叫びを挙げただけだけど)。
 すると昨日、某有女優が自らマハカラを訪ねてプリンをごっそり買って行ったというではないか。店主のビルゲがまるで親でも死んだかのような声で「あっ、さっき、あの…○○○ちゃんっていうか、さんていうか、いらっしゃいまして、うれしいプリンとチョコプリンをお買い上げになられて、夢のようでしたが、実は僕は居てなかったんで、ホンマ悔しいというかショックというか…、今頃、“おいしいわ”って食べてくれてるんでしょうかね、だったらめっちゃ嬉しいいですけど」と、完全に現代国語から脱線してしまった言語で彼なりの興奮を届けてくれた。
 マハカラのチョコプリン、こちらもよろしくお願いします。




どぞ!おいしいヨ




『素晴らしき4時間』

 昨日の日記は単なる妄想ではなく、実は昨日、僕の大切な友達の結婚式があった。新郎も新婦も大切な友人で、招かれるゲストも顔見知りの方が多く、一方的に知っているスターも多かった。
 固有名詞を書きたいのは山々であるが、ラインナップを羅列してそのヒットパレードの詳細をお教えするとDVD化したらミリオンセラーを越える勢いのため、蓋をしめておく。
 空間はキャンドルアーティストのJUNEが力を貸してくれた。キャンドルだけの灯りで行われる大人のウェディング、なんとも美しく幻想的だった。
 それにしても「歌手」と呼ばれる人たちの歌は素晴らしい。当たり前だ、だから「歌手」なのだ。そして歌い手たちの登場をあのコが朗読で繋ぐ。どうしてもジョイントしたかった女性(ひと)とこういうかたちで巡り会えるとは、奇跡にも似た縁を感じてやまない。
 そしてステージを目の当たりにしている僕は完全に岐阜の中学生に戻っている。テレビの中で黒柳徹子と久米宏が紹介を促し、銀の扉からスターを待ちわびるような、そんな童心の中にいた。
 
 東京の底力、業界の結束力をいやがうえにも感じた素晴らしい4時間。素晴らしい人たちに心から祝福されたふたりを、どうしようもなく誇りに思った。
 素敵な一日、みなさんありがとう。



『秋桜(コスモス)』

 インタビュー原稿、エッセイ、企画書、始末書、どこまでも原稿が追いかけてくる。文章はごまかせない。一時、妙なテクニックを身につけて誤摩化した時期があったが、書いた物を見返してゾッとした。文章の中には何もなく、空っぽだった。
 文章は言葉であり言葉は思いであり、思いをつくるのは感情だ。すなわち感情が文章になる。主観であれ客観であれ。
 それにしても書けない。時間は迫る。最近は喋る仕事ばかりで少し書くことを怠けていたからだろうか。

 こういうときにはとことん落ちてみる。いつものことだ。今回のBGMは百恵ちゃんだ。『秋桜(コスモス)』を大音量で鳴らす。明日嫁ぐ娘と我が家で最後の夜を過ごす母親になりきる。涙ぽろぽろこぼれる。
 次に明日嫁ぐ娘に感情移入する。もうポロポロではすまされない。大音量の大号泣のどしゃぶりセンチメンタルである。
 そういえばこの前、岐阜県庁で話をして城下町のゆきえちゃん家のそば屋で天ぷらそばを食ってから、郡上の河合徹ちゃんに名古屋駅まで送ってもらっている最中、軽快に走るプリウスの中で『秋桜』を聴きながらふたりでしんみり泣いた。馬鹿げた話だが、歌に泣かされる男が俺は大好きである。お互いに涙を悟られまいと急遽サングラスをかけた。グラスの横からちりりとこぼれる涙、文章ではなかなかエエ話に聞こえるが、現場はめちゃめちゃダサイ。恥ずかしさを紛らわすように次の曲の『プレイバック part2』をふたりして振りを付けて歌った。徹ちゃんのハンドルがブレ、プリウスは横に反れた。頑張れプリウス、お前は名車だ! 
 よし、少し気がまぎれたぞ。もう一回コスモス聴いてから原稿書く。




2010/02/16

『プールの頑固じじい』

2010/02/15

『マッチ30周年』

2010/02/12

『チョコプリン』

2010/02/11

『素晴らしき4時間』

2010/02/10

『秋桜(コスモス)』
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