『新聞記者東京デビュー』

 取材に来てくれた岐阜新聞の記者と昼飯を食って(カレーライスね)、その4時間後にはマロン鍋に誘って20数人で拍手と手拍子で迎えて、照れる記者にいきなり「まっこり」を一気飲みさせた。記者は東京勤務になって3ヶ月弱らしく、まだまだ東京のことがわからないと言っていたので、俺も29年いてもさっぱりだと言ったら安心していた。
 どうやら記者は酒が弱いらしく、かなり緊張気味だったので、どんどん注いでやったらいい顔色になって、「カルチャーショックです」を連発していた。その言葉は何を意味するのだろう。“ほんとにここが東京”という意味なのか、“こんな幼稚な大人ばかりでいいの?”なのか、それとも“これが俺の思い描いた通りの東京”なのか。
 ただ、集まった20数人の中には岐阜県民が3人、名古屋人が3人、関東以外の地方出身者が10人以上と、かなりドメスティックな匂いが充満していたので居心地は悪くなさそうだった。
 記者の東京デビューにはもってこいの空間だったのではないだろうか。またひとり仲間が増えてうれしかった。
やっぱ岐阜の人(じん)はえーわ。



『スポーツと人生』

 『下記の日記、どうやら一昨日の夜中、マロン鍋の最中に泥酔しながら書いていたみたいだ。
 なんで書いたんだろう? 誰かとそんな話をしたんだろうか?
 まったく記憶がないが、読んでいてふむふむと思った』

 スポーツに対する思いは年を重ねるごとに変化してくる。
 最初は勝つことだけしか考えなかった。勝つことがスポーツの意義だと信じていた。負けたらなにかが崩れると思っていた。ライバルが登場すると、互いを高めるように競い合った。勝つこともあれば負けることもあった。どちらにも勝敗がつかず、ほかの誰かが勝ったときが一番落ち込んだ。
 負けても反省するようになった。どうしたら勝てるか、どうしたら負けないか。それでも容赦なく負けは続いた。勝つことの難しさを知り、負けても腐らない気持ちを大切にした。
 少しも勝てなくなった。負けに慣れたわけではない。悔しさだってまだある。そして負けをどう活かすかという課題をもった。
 たぶん、誰もがそんな人生にいると思う。自分だけじゃないという事実を知るだけでも力がみなぎる。



『恒例マロン鍋』

 昨日は恒例のマロン鍋をやった。急にやろうと言うことになったわりには30人もの人が来てくれたので嬉しかった。僕はもちろんみんなを知っているけど、一緒に鍋をつついている誰かと誰かは初対面で、名刺交換の代わりに小皿に水炊きを入れながら「どうも」とやっていた。
 こういう景色を見るのがとても好きだ。名刺交換なんかよりグッと温ったまる。それでも誰もが社会人なので、湯気の立っている小皿を置いて背広の内ポケットをごそごそしているので、「鍋食い終わってからにせんか!」と気合いを入れてやった。
 さっきまで知らなかった同士が鍋をつついて酒を飲む。どこに共通項を見いだそうか、などという野暮な鍋ではない。名前というか、呼び名だけ分かればそれでオッケーなのである。
 誰が名付けたマロン鍋。日本の冬には鍋がある。鍋があるから人が囲う。人が囲えば丸くなる。こうして寒い冬を丸く暖かくする鍋ヂカラ。日本はすごい。鍋はすごい。



『携帯水没』

 金曜日に携帯が水没した。初めての出来事なのであたふたしていたところ、一緒にいたシゲが「冷蔵庫に入れると復活する」と言ったので、迷わず冷蔵庫へ。待つこと半日、携帯は復活どころか凍傷のようになってしまい、完全に息絶えた。
 ドコモショップへ持って行って、言わなくてもいいのに冷蔵庫のことまで話したら、目を凝視されたまま口元だけで失笑された。そいつの胸には研修生というプレートが貼られていて余計に落ち込んだ。
 「そういうデマを信用されるお客様がいらっしゃるんですよねー」。言葉遣いは丁寧だが、早い話、あんたバカでしょと言われてるようなもんである。ただ、なんか知らんが申し訳ない気持ちになって、“はい、もうしません”と呟いてしまった。
 腹が立ってシゲに電話したら「冷蔵庫やねーって、冷凍庫!」と自信満々に返ってきた。
 いつかあいつのケータイ、カッチカチに凍らしてやる。



『マハカラのプリン』

 昨日の夕方に用事で近所のイカ焼き道場『マハカラ』に寄ったら、「まかない食っていきませんか?」と言われたが、腹もそんなに減っていなかったので遠慮しようとしたら、店主のビルゲは含み笑いで「まぁ、そんなこと言わずに」と言って、帰ろうとする俺を引き止めた。
 すると店の奥から店員のゆきちゃんが大切そうにお膳を運んできて、俺たちの歓談するテーブルにそれを置いた。「はい、まかないです。全部いっちゃってください」。そこには15種類のプリンが並べられていた。
 「なにコレ?」「プリンの食べ比べです」「なんで?」「プリンやるんです」「これがまかない?」「多分、腹がモタレて胸焼けするんで、これだけです」
 見るからに胸焼けしそうな光景だったが、自他ともに認めるプリン好きゆえ、15種のプリンを順番にそろーりと手をつけた。東京中の名店のものをかき集めての品評会だったが、ほほうと感心する味が2つほどあったので、「これどこの?」と聞いたら、ビルゲは「マジですか?ゆきちゃん作です」と胸を撫で下ろすように言い、ゆきちゃんは嬉しそうにうつむいた。実は名店のプリンたちに、ゆきちゃん作を4種類紛れ込ませていて、それを中目一のグルメと評判の俺に確かめさせようと思ったのである。こやつ、マハカラのぉ~。
 友人だからというわけではないが、あのプリンが完成となると、確実に恵比寿や代官山から人がなだれ込む。うっとうしくないわけではないが、友人の店に行列ができる光景を想像すると嬉しくなる。
 毎度、中目黒を仰天させる『マハカラ』のB級グルメだが、今回はどうやら脱B級、それどころか女性誌のスィーツ特集を席巻しそうな味である。お披露目は1月の成人式後らしい。
 ただ、俺はしばらくプリンを見たくもない。




2009/12/17

『新聞記者東京デビュー』

2009/12/16

『スポーツと人生』

2009/12/15

『恒例マロン鍋』

2009/12/14

『携帯水没』

2009/12/10

『マハカラのプリン』
このサイトに掲載のイラスト
写真・文章の無断転載を禁じます

Copyright © 2001-2010 MaroonBrand