『トムさんに教えられた一行』

 Bro.Tomさんから年賀状みたいな来年のカレンダーが届いた。「LOCO MOTION」というタイトルで写真立て仕様になっている。写真はトムさんの息子さんの心くんが撮影したものが24枚。すべてゴールデンレトリーバーを撮影したものだ。どうやらこの犬の名前が「LOCO」らしく、それでLOCO MOTION。なんとなくカモンべビー的な感じが無くもない。 
 トムさんと息子さんの犬への愛情がにじみ出るかわいいスナップもいいけど、それよりも心に響いたのは、送り状に付けられたトムさんの言葉だ。
 「2010年 何回 会えますか?」
 素晴らしいメッセージである。どれだけ美辞麗句を並べても到底かなわない言葉であるとともに、油断していた自分をドキッとさせた言葉だ。
 だからトムさんが好きだ。つまりはすべてそういうことなんだよ。友達とか親友とか先輩とか恩師とか、歳をとればとるほど会いたい人は増えるけど、日々に忙殺されて本気で会うことを、いや会おうという気持ちが薄っぺらくなっている。善い人も悪い人もいるけど、人と出会ってきたから今があるわけで、そういう人たちに会うことは懐かしい気持ちを埋めるだけではなく、自分を確認する時間でもあると思うんだな。
 会う、ということは気持ちを込めなくてはならないのである。偶然の出会いもあるけど、大切に思う人には会うために気持ちを込めたいのである。会うことは努力なのだ。
 僕にも会いたい人がたくさんいるけど、会えることは当たり前ではないんだと思わせられた一行だった。
 2010年 何回 会えますか? 2011年も2020年も。ずっとずっと、何回会えますか?



『ともだちの結婚パーティ』

 久しぶりに友人の結婚パーティの演出を引き受けることになった。食えない頃、司会で食いつないでいた頃もあったが、自分みたいな男がそういうことをあまりするもんじゃないと心に決め、しばらくの間、結婚式は参加させていただくだけにしていたが、今回はどうしても引き受けなければならない友人からのオファーだ。気持ちを切り替え、喜んでお引き受けした。
 ただ、そのカップルはザッツ業界のふたりで、パーティの出席者をさらっと聞いたところ、とんでもないことになっている。そんじょそこらの歌謡祭どころの騒ぎではないほどのヒットパレードが行われそうなのだ。
 テレビクルー厳禁のパーティでゲストに負けないニクイ演出が必要とされること必至。しかも場所はパークハイアットだ。さて、どうする。どうやって泣かすか、いかに笑わすか。酒も入れば間(あい)の手も入る。もちろんみなさんパーティ慣れした強者ばかりだ。う~ん、なかなかのプレッシャーである。
 そうだ、あいつのアレを使おう。きっと相談に乗ってくれるはずだ。これ以上は書けない。来年の2月になったら、報告書としてパーティの模様をお伝えすることにしよう。



『松坂大輔』

 松坂大輔にインタビューしてきた。久々の超大物だけに緊張した。ところが松坂、自らオーラを消して俺の緊張を解きほぐしてくれた。なんという心遣い、なんという謙虚さ。言葉はしっかりと丁寧でハキハキしていた。落ち着いて穏やかで春を連想させるような温もりある佇まい。どの言葉にも彼の中のなにかが映し出されていた。素直で飾らないことがこれほどにも美しいものだと教えてもらった気がした。
 そんなことを松坂本人は微塵も感じていないだろうけど、きっとそういうキレイな人柄が彼の成功を支えているのではないかと思うのだ
 この年になって恥ずかしいがグローブにサインしてもらった。「くりちゃん」って書いてくれと頼んだら、「“くりちゃん”じゃ失礼じゃないですか?」とまたまた気遣いの豪速球。出身地も高校もやってたスポーツもなにも関係ないけど、同じ日本人として俺は彼を後輩と思うことに決定した。こういう素晴らしい後輩が先輩を育てるのだ。そして俺たち先輩は、もっともっと先輩のハゲ頭たちを育てなければならん。
 決めた。来シーズンはボストンに行く。ジャイアンツよ、俺の留守の間、しっかりと勝ち続けるように。




いいだろ




『桑田佳祐と小出恵介』

 2日の晩にはパシフィコ横浜で桑田佳祐を観た。「Act Against AIDS」のチャリティーコンサートである。実は俺、一度も桑田を観たことがなかった。もちろんサザンも。サザンどんぴしゃ世代にあって完全なモグリである。脳髄にはほとんどの曲がはり付いているけれど、生歌は初めて。しかもサザンでも桑田ピンでもない、映画音楽という切り口でのライヴ。
 面白かった。彼の歌に対する姿勢は美しい。本当に歌が好き、軽音楽が好きでたまらないことがビンビン伝わってくる。歌うことで何かができるということを確信している人だ。シャイな性格が溢れ出ていて、恥ずかしさをまぎらわすようにおどける姿に泣けた。
 『ザ•ベストテン』の今週のスポットライトで初めて見てから31年と5ヶ月経って初めての生。これが桑田佳祐か。随分経ったけど、あの時のびっくり仰天の登場と少しも変わらない新鮮な衝撃を与えてくれたことに感謝している。前の列の3つ左の席に小出恵介がいた。最近の若い役者でいちばん好きな顔なので、こちらも初生で嬉しかった。終盤戦、『パッチギ』挿入歌の「素晴らしい愛をもう一度」を大合唱したらまた泣けた。『パッチギ』に出演していた小出恵介もマスクがぷかぷかしていたので多分唄っていたに違いない。加藤和彦は死んだけど、歌は残る。歌の中にある人々の思い出や苦みは永遠なのだ。
 ヨコハマ、時に満月。港に脈打つ波はぼくらの鼓動。いくつもの感情を波音に変えて、凍える空に叫ぶんだ。
あの素晴らしい愛をもう一度。
 人生はドラマ、主演はあなた。シナリオはない。



『不在証明』

 一昨日、松田優作さんにオマージュを捧げる朗読劇を観て来た。読み手は吉川晃司と阿木燿子。優作さんの書いた詞をもとに、松田優作の息づかいが聞こえる台詞が読まれ、アコースティックサウンドが彩りをつける。ギターとボーカルに織田哲郎。ヴァイオリンは斉藤ネコ。ベース奈良敏博。
 「不在証明」と題された演目は実に大人でブルージーだった。特に織田哲郎の歌にはシビレた。男の歌声でイキそうになったのは初めてである。ちょっと苦い恋の思い出なんかをやさしくやらしくほじくりだすような…けれど少しも下品じゃなくて、エロでもスケベでもない。きれいで嬉しくなるようなHさとでも言おうか、そんな気分にさせる衝撃的なボーカルだった。
 死んで20年も経つというのに、誰かが松田優作を演りたがる。演り方にとことんこだわり、触り方にルールを持ち、理念と信念を持って松田優作に挑み、捧げる。ドカンという打ち上げ花火ではなく、ひっそりと、けれど力いっぱいに燃え続ける線香花火のように、美しく儚い一夜の夢。
 東京、時に満月。松田優作を聞いて、松田優作を聴いて、松田優作を思い、月に松田優作を重ねる。
 彼はどこでこの朗読劇を観ていたのだろう。不在証明か…




2009/12/09

『トムさんに教えられた一行』

2009/12/08

『ともだちの結婚パーティ』

2009/12/07

『松坂大輔』

2009/12/04

『桑田佳祐と小出恵介』

2009/12/03

『不在証明』
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