『the head・団長への道』〜一回生の章〜 六

〜一回生の章〜 六


 本入部を明日に控えた日曜日、俺は遅まきながらの入学祝いと食事をご馳走になりに叔父さんに招かれた。場所は人気の焼肉屋。慣れた調子で注文する叔父さんが「一杯呑むか!」と15歳のボーイに“生大”を差し出した。
 小学生から親父の晩酌に付き合い、中学の頃にはマイビールを備蓄していた俺にとって“生大”なんて朝シャン前だった。
 テーブルに咲いた霜降りロースやタン塩の花が俺の腹に収まっていく。まるでギャル曽根、いやゴリ西である。
「ところで栄一、野球はやらんのか?」。
「野球?あぁ、やらせんよ。野球は中学で終りや、たかだか名古屋市で優勝したくらいでは無理や。それに一年だけで百数十人おる。特待はもちろん半特や推薦、県外からもえらい来とるわ。無理、無理っ」
 小ニから野球を始め中京に入って野球をやると思っていた叔父さんはちょっとガッカリ&ちょっと怒って「そんなら何やるんだ?」
 目の前には二杯目の“生大”がダイナミックに用意されていた。
「ああ、とりあえず応援団やろうと思うとるわ」
 この何気ない言葉に叔父さんの動きが止まった。
「応援団?あの“チョンワ、チャンワ、クエッ、クエッ”か!」
(※“チョンワ、チャンワ、クエックエッ”とは、どおくまん作『嗚呼!!花の応援団』の主人公(青田赤道)が絶頂時にとるポーズである)と青田の真似をしながら爆笑した。
 俺はその間抜けな動きを見ながら「いや、たぶんまともやと思う」とテンション低く答えてみたが、青田赤道のキャラが大塚副団長と被り思い出し笑いで噴いてしまった。
 
 肉どもをたらふく喰い、余裕で“生大”を三杯飲み干した俺は、いい気分になり「おう、オジキよ、団長になって甲子園行ったらぁ!」と巻き舌で吠えた。
 まさか、この確信も信念もないガキの遠吠えが、二年半後には現実になるとは誰も思っていなかっただろう。

 明けて月曜日、強烈なニンニク臭と少しのアルコール臭をお供に半寝状態で地下鉄に乗ると、例のミット音が!
“番長や!”。
 その鈍く重い音が俺の中枢神経を叩き起こし現実の世界へと引き戻した。
 二人前の座席にほぼ180°開脚の御仁。
「おお、、押忍」
 まだ慣れないぎこちない挨拶に「おう、チビちゃんおはようさん。ええあんばいきゃ」と流暢なお婆仕様の名古屋弁でニコリ。言葉の意味が見つからない俺は、とりあえず「押忍」と答えた。その横にはいつもの二年生の先輩がSPばりに立っていた。
 この男、兵庫から野球留学で来た、出口という。にこやかな番長とは対称にいつも不動明王みたいに睨みを効かせてた。だが、この男が現在の俺のギャグ魂を形成し、揚句の果てに人生を左右する人物になろうとは知る由も無かった。

 乗り換え駅の上前津に着き、鶴舞線のホーム最後尾に立った。長いホームは通勤・通学客で溢れかえっている。ふとホーム後方に設置されたモニターに目をやると、一台はホーム最前列を、もう一台はホーム中央
を映し出していた。
 最前列のモニターには女子高生がバーゲンセールのワゴン品みたいにわんさかいる。“ええなぁ〜”と心の中でポツリ。さて中央のモニターはどうだ?
 んん? 人影が映ってない? それどころか画面一面真っ黒だ。
 しばらくして自動調整のカメラが引いたのだが、そこに映し出されのはヤクザものの映画を観た後に映画館から出てくるような、眉間にシワがより過ぎて、まるで肛門のようになっている吉田団長と大塚副団長だった!
 ガビ〜ン!! やべっ、あの二人だよ。よりによって同じ電車かよ。俺は悩んだ。挨拶すべきかスルーすべきか? と考えるよりも体が先に反応し、柱の影に身を隠した。それから電車がくるまでの数分は柱からモニターを覗いたりまた柱に隠れたりと、当時の広島カープの古葉監督か、あるいは巨人の星の明子ねえちゃんのように落ち着きつきなく小刻みに動いた。

 プワーンッ。電車がホームへ入って来た。俺は彼等に見つからない様細心の注意を払い電車に乗り込もうとして、最後に入念なチェックと思いモニターを見た。
 すると、なんとモニターの中の大塚副団長と目が合ったのだ!
 ギョエッ〜! バ、バレた、見られた、どうしよう? いや相手からは見えるはずがない。落ち着け、でもあの人ならレンズ越しでも見通すかもしれん。なんせあの眼力だ…全身に悪寒が走り嫌な汗が出てきた。

 学校までの車内はいつも生き地獄だった。降車駅に着けば着いたで彼等にバレないよう、太陽にほえろの山さんみたいな尾行スタイルで校門を目指した。
 なんとか無事教室にたどり着き、まだ朝礼も授業も受けてないのにヘトヘトの俺。
 男子1700人の軍隊式朝礼を終えイナモトやセイゴ、マコト達と本入部について語ると、どうやら皆、一応入部するつもりらしい。そして6時間の授業を終えいざ部室へ向かった。
「あれ?トシは?」いつも後方を歩いてる同じクラスの中村がいない。
「逃げたか?」セイゴが辺りを見ながら呟いた。
「まっ、ええぎゃ。あいつでは無理だて、行こまい、行こまい」
 クールフェイスのコウタロウが言った。

 部室前に着き他の連中を見渡すと、先週より少し人数が減っていた。
「カトウは?」首を傾げながら雑談していると、知らぬ間に2年の中島と村松がものすごいボリュームで怒鳴りだした。
「テメェら挨拶はぁ? あぁ? だべっとんじゃねえぞ! ちゃんと整列しとれボケぇ!」
 明らかに先週までの態度と違う中島。“なんじゃこの目無し、いつも先輩にイジられヘラヘラしとるくせに”。
 軽くガンを飛ばすと、「おい、先輩にとる態度じゃねえな」と村松。
“おい、おい、本入部となるとコレもんかよ。頼むぜ大将”。
 不快感を露わにしていると中島の声が響いた。
「押忍っ!」
 体育館横の通路にあの二人が!俺達も続けて挨拶をする。
「押忍っ!」
 いつもは少し愛想笑いをする吉田団長の顔が強張っている。いつも鋭い眼光の大塚副団長の目は強烈に血走っていた。
“どうしたんや? 今朝の地下鉄の行動がばれたか?”。またまたいやな悪寒が走った。
 部室内の先輩から「1年入れ!」の声が、、
「失礼します」「失礼します」。続々と部室に入る俺達。
 ひと時の静寂の後吉田団長が口を開いた。
「今日ここへ来たと言う事は、どういう事か分かっとりゃぁすか?」
 何故か俺を見た。答えを躊躇する俺に再度、団長の声が響く。
「分かっとりゃぁすか?」
「はいっ。本入部するためです」
 答えるや否や「『はい』だにゃぁ、返事は『押忍』だぁぁぁ」と大塚副団長のソプラノが部室中に響いた。
「まっ、ええぎゃノブヒコ。順を追って教えたりゃぁ」

 早くも吉田&大塚の『飴と鞭作戦』が開始された。そして本入部第一弾の命令が若き兵隊達に告げられた!
「ええきゃ、一週間の猶予をやるで全員革靴を揃えろ。応援に学ラン・革靴は当たり前だ、ええきゃ」と団長命令が下った。

 その後は葬式の記帳のように、氏名、クラス等を大学ノートに記入させられた。そしてなんとか第一日目が終わり帰宅できるのかと思いきや
「よし、全員できゃぁるぞ!(帰るぞ)」と吉田団長。
 部室前に二列に並ばされた俺達は、先頭の団長・副団長、その後ろの二年に続きゾロゾロと歩き始めた。
 それは、大名行列でも凱旋パレードでもなく、目付きの悪いゴキブリの行列のようだった。
 まさかこの行列が毎日続くとは誰も知らない本入部初日。
 それは団長への地獄の階段を登り始めた日でもあった。


<続>



『the head・団長への道』〜一回生の章〜 伍

〜一回生の章〜 伍


 応援団に仮入部して2、3日が経った。仮入部の俺達は何も考えず毎日のんきに部室へ出入りしていた。その日もただ先輩達の馬鹿話しをしたり、聞きたくもない応援団の歴史等をダラダラと聞かされていた。
 なぜか吉田団長が一本の棒を持ち出し、そのただの棒きれの中に歴史が詰まっているかのようなマジックショーみたいなウンチク話しが始まった。

「ええきゃ、お前さんたぁ〜。これは代々受け継がれてきた精神棒という。この棒には先輩方の汗と血が染み込まれた由緒ある棒や!時に厳しく時に優しくお前達を立派な団員にしてくれる有り難い物だ。粗末に扱うなよ、ええきゃ!」
 そう言ってその棒を手渡された俺達は腫れ物を触るかのようにその棒を回し見した。側面には〈精神入魂〉や校訓である〈真剣味〉の文字が書かれていた。それも恐ろしいほどキタナイ字で。
 そしてそれは小学校の修学旅行で誰もが買い求めた、東大寺の文字入り木刀より粗悪でただの棒きれを誰かが暇にまかせ彫刻刀で削って作ったパチ物だった。
 “こんな棒を由緒あるなんて何考えてるんやろ。『うまい棒』の方が歴史があるわ”と小馬鹿にしながら感心するふりをして見ていた。
 それにしても絞まらない話やなぁ、とふと視線を上げるとあの爬虫類男、いや副団長であり親衛隊々長の大塚先輩がまたまた冷酷な薄ら笑いを浮かべ俺達を見ていた。そしてその棒きれの使い手が大塚副団長だと言う事を後日思い知らされる事になる。

 そうこうしていると部室の重く冷たい鉄扉が軽々と開けられた。
「おるきゃぁ〜!」
 名古屋弁丸出しで威風堂々と登場したのは野球部の正捕手であり総番長の吉田先輩だった。
「おう、サトシどうしゃぁた?」W吉田のサトルがこれまた丸出しの名古屋弁で聞くと「おみぁさんとこの新しい兵隊見に来たんだぎゃぁ」そう言って俺達達にイチベツをくれる。すると「おっ、チビちゃんおみゃぁさん援部に入りゃぁたか。しっかりやりゃぁせよ」と、まるで戦争で旦那を亡くした婆ちゃんが使うような懐の深い名古屋弁で俺の頭を撫でた。
 そして今度は「あるきゃ?」とコント赤信号の小宮もどきの2年の村松に発した。
「押忍」の返事とともに何やらカバンを探り始めると、同時にこれまた2年の目無し男(異様に目が細い)中島が、
「1年、外に出ろ!先公が見えたら速攻で教えろ!下手うつなよ!」と俺達1年を外へ押し出した。
 すると村松が「おい、西尾と稲本、お前達残れ」と部室に連れ戻された。
 中島が何か手に持ち鉄扉が開かない様にカイモノをした。それを見た瞬間俺に衝撃が走った!?
「ガ〜ン!」さっき、それも数分前吉田団長が観光ガイドかガマの油売りの様に講釈を並べた精神棒が鉄扉のつっかい棒になっていたのだ!

 “なんじゃこりゃ。こんなんじゃ先がおもいやられるわ”と脱力感が体を包み始めた時、今度は隅っこに座り影も髪も薄い、加古という2年から日の丸扇が手渡された。
「扇げ」
 顔はアホの坂田だが声だけは森山周一郎似の渋い重低音バズーカが冷たいコンクリート壁に響いた。
「扇ぐ?」
 両手に持った扇と稲本の顔を不思議顔で見ていると「押忍、失礼します」の声と共に、中島が先輩達のタバコに次々と火を点けて回った。
 W吉田と大塚は恍惚の表情で旨そうにタバコを吸った。俺と稲本は持った扇でなにをするのかが理解出来た。壁に開けられた窓というよりブロック塀をくり抜き鉄筋が立てられている刑務所の窓のようなところを目掛け煙りを扇いだ。「パタ、パタ、パタ」力無く扇ぐ俺達に「もっと扇いだれや」と大塚からの恫喝が!渾身の力を込め扇ぐ扇に「これも練習だぎゃ」とニヤつく吉田団長。
 冷静に観たら、これほどバカで間抜けな絵はない。こんなことなら高校なんて行かずに第一希望のヤクザにでもなっとけばよかった…

 そうこうしていると外で押し問答のような声が。
「あっ、すいません。なんですか?」
 誰か分からんが1年の慌てる声が。すると「サトル〜、おりゃぁすきゃ〜」先刻の番長吉田よりもどぎつい名古屋弁が耳に飛び込んできた。
「ヤスきゃあ〜?今開けるで」と吉田団長。急いで精神棒、いやつっかい棒を外し鉄扉を開ける村松。
「お〜う、なんだぁ、サトシもおりゃぁたかね」声の主を見ようと恐る恐る振り向くと、部室の壁を隠してしまう程の巨体の男がえなり君のようなニコニコ顔で立っていた。

 180センチを余裕で越え120キロはあると思われるその男に隠れて見えなかった、小さいが目つきが超鋭い男も続いて入ってきた。この二人も現中京の顔役で巨体が高橋(通称ヤス)目つきが鋭い方が松本(通称タツマサ)と言った。
 この二人もタバコを旨そうに吸い、W吉田や大塚達と名古屋弁講座のような会話を続けた。その後も続々と部室を訪れる先輩達にビビリながら扇を扇ぎ続けた仮入部のある一日。

 二人(吉田、大塚)が本性を出す日(本入部)まであと3日、ここに入部したら一生恋などできないんじゃないかと本気で悩みはじめた花冷えのする日だった。




<続>



『the head・団長への道』〜一回生の章〜 四

〜一回生の章〜 四

 週が明けた。今週からは本格的に授業が始まる。だが・・・そんな事より脳裏をよぎるのは部活のこと、授業なんて身が入らない。そんな中、休憩時間になると、コウタロウやマコトが部活の話で盛り上がっていた。
「団長デブだよな〜。デカイ人(副団長)おそがそう〈怖そう〉だし」などなど。
 するとその話の輪に髪の毛をツンツンにおっ立て眉毛をミクロに剃り揃えたセイゴが加わってきた。
「俺も援団入ろうかな?2年のナカシマっていう人が俺の中学の先輩らしいわ」。
 その言葉に反応したのがイナモト。「入れ、入れ!俺んたの組で仕切ったろまいか!」となぜかすぐに辞めると言っていたヤツが息巻いていた。

 結局俺達1年普通科C組からは、マコト、イナモト、セイゴ、ナカムラ、そして俺の元気者5人が参加する事になった。それと同時に、俺はこの悪タレ達が集うクラスの級長に選ばれた。
 放課後・・・教えられたクラブハウスに向かう俺達。ハウスへ向かう通路は野球部の1年達が我先にと重そうな中京バッグを肩に掛け全力疾走し、柔道部や剣道部ではこれまた1年達が道場掃除に余念がない。
 俺達がハウス前に着くと土曜日に見た連中が数人いた。
「おう、イケダ〜」とマコトに声を掛けきたのは顔が人の2倍は有りそうなオッサン顔の厳つい奴。
 この男、マコトと同じ中学の同窓生でタイチ(後の親衛隊々長)という。その横にはこれまた同じ中学出身のベビーフェイスのマサトが笑ってた。
 暫くすると他の1年生部員もゾロゾロ集合し、その数は17人にものぼった。

 ハウス前でワイワイガヤガヤやっていると土曜日に見たチビで細目の男とコント赤信号の小宮もどきの男がやってきた。
「やあ、君達よく来たね。もうすぐ先輩が来られるから整列してくれ」と小宮もどきが仕切りを入れた。次に細目の男が「あの食堂の角を先輩が曲がったら、俺達に続いて押忍っと大きな声で挨拶をしてくれ」と乗っけから応援団の流儀を押し付けられた。

 そして突然!?俺達に能書きをタレていた先輩二人が手を後ろに回し「押忍!」の大声とともに頭を下げ固まった。(なんじゃ?)あまりにも突然、そして見た事もない挨拶にア然とする俺達に「お前等とりあえず頭を下げろっ!」と慌てて怒鳴る小宮もどき。
 全員言われるがまま頭を下げた。すると直ぐに「もとい」の号令。ノソノソ頭を上げると、またまた押忍の声と同時に頭を下げる先輩二人。“何がどうなって、こうなるんや”。混乱する俺達。

 そして・・・あたふたする俺達の前に、あの巨漢男と爬虫類のような冷たい視線を持つ大男が姿を現した!巨漢男は笑ってる、爬虫類男は俺達をイチベツし小動物の獲物を見つけたかのようにニヤリッとした。
 その時だった。「ゴ—ッ、ガラガラガラガラ」いきなり背後の鉄の扉が自動扉のように開いた!

「押忍!失礼します」中にいた別の先輩二人が団長と副団長を迎え入れた。
「おう、ご苦労」
 巨漢男が言った。爬虫類男は外にいる細目と小宮もどきに
「お前等、中入ったれや」と指示を出した。すると頑丈な鉄の扉が閉められ俺達はハウスの外でただただ突っ立っていた。“どうすりゃええんだ?”。なにをしていいのか分からない俺達は雑談に花を咲かせていた。

 中からは僅かな話し声と時折笑い声が聞こえていた。「なあ、ヤニの匂いせえせんきゃ?」。タイチが鼻をひくつかせ小声で言った。一斉に扉に群がる俺達。
 間違いない!中で煙草を吸っている。扉とコンクリート壁の隙間から微かに煙がもれている。するとその隙間から「おい1年、校舎の方から先生らしき者が来たらソッコーで教えろ」と誰とも分からぬが命令が下った。
 俺達は言われるがまま校舎方向を凝視した。ハウス前には物凄い数の他のクラブの先輩や1年達が往来してる。そんな光景を見ていると、いきなり鉄の扉が開き、おそらく二年と思われる少し髪の薄い男が「1年、中に入れ」と超低音の声で俺達に言った。
 とうとう中に入る時が来たのだ。

 部室の中は煙草で少し煙っていた。誰から入るか躊躇していると小宮もどきがイナモトの腕を引っ張り「早く入れ!」と声を荒げた。イナモトに続いてゾロゾロと部室に入る俺達。正面には巨漢男がニコニコし、その横で爬
虫類男が眼光鋭く俺達を見てた。
 真四角の部屋にコの字型の木製のベンチ、ブロック壁には所狭しと落書きが・・・キョロキョロしていると巨漢男が立ち上がり「諸君ようこそ応援団へ。俺は団長の吉田智(サトル)だ、よろしく!ちなみにうちの番長も吉田智と書くが奴は(サトシ)と言う。そんなことで、団長・サトル、番長・サトシのダブル吉田をよろしく!」と挨拶なのかなんなのか分からない自己紹介が終わった。
 続いて座ったままの爬虫類男が「副団長兼親衛隊々長の大塚だ」と前者の団長とは異なり、それらしい挨拶と言えば挨拶だったが、なんだかぶっきらぼうでまるで良くないインパクトを放っていた。

 続いて2年生4人の紹介に入ったが、正直これといってパッとする奴はいなくて、これならすぐシメれるかも?なんて甘い考えが浮かんだが、この連載を読んでる当時の二年生がいつ暴れ出すかわからんので、「それはウソです」ということにしておきます。
 そして俺達1年生の自己紹介へ。名前や出身校だけの簡単な紹介ではあったが、団長のヨシダは「あっこの学校のだれそれは知り合いだ」とか「その学校の番はだれそれだろ」とまるで中学不良図鑑の著者の如く知識をひけらかしていたのを鮮明に覚えている。

 そんな時間が過ぎ先輩達の雑談を数十分ただただ聞かされたのだ。
 話題が途絶えた時「今日はこれまでだ、また明日軽い気持ちで来てくれや」とヨシダ。そしてオオツカが「君達は大事な後輩だ、一週間は仮入部だから遊び感覚で寄ってくれればええでな」と口元を緩めた。
 しかしその視線は冷たく、まるでライオンがシマウマの群れを見つけたように光って見えた。

 本入部(地獄)まで一週間、団長までの辛く険しく馬鹿馬鹿しい応援団初日だった。




<続>



写真バカららばい 第2回 『夏休み』
思えばこの夏は記録的な暑さでしたね。40℃を越える場所もあって、
「この暑さはいつまで続くんだ」と吐き捨てるように言っていたけれど、
気がつけばもう秋。
もう少ししてセーターを羽織るような頃になると、
暑くてたまらなかった夏さえ懐かしく思えるのでしょうね。

もう夏休みなんて関係のない年齢になってしまったけれど、
やはり僕たちニッポン人の心の中には、永遠に夏休みがあるものです。

終わってしまった夏と、心の中だけの夏休みに想いをよせて…
みなさんから寄せられた、たった一枚の『夏休み』
ご覧ください。


『写らら』編集長マロンブランディーによる評&演出と、グランプリ以下の順位も発表します。



砂川昭子さん
評&演出
人間だとか鳥だとか魚だとかいう問題ではない。夏の海がそうさせただけ。根拠のない躍動は限りなく美しい。ただそれだけ。これが冬だったら即入院。




木村秀明氏
評&演出
空の蒼が鮮やかです。とても気持ち良くて清々しくて。けれどどこか怖くて意地悪な色にも視えるのは気のせいでしょうか?なにをやっても空はお見通しなんでしょうね。構図良し。コントラスト良し。湿り気良し。なによりも道と電線と空と雲と少年が、この場所でひとつになっています。




鈴木暁子さん
評&演出
写真には時に音楽が流れます。その音楽によって写真は動き出します。そこに映し出された他愛もない一瞬は誰かの中でかけがえのない瞬間となり、人生さえ変えてしまうこともあります。写真の素晴らしさとはそういうものです。海岸線を走る少年と少女。たったそれだけなのに、溢れる感動があります。




小泉修氏
評&演出
シャッターを切るその時が、それぞれの人生の中でいちばん新しい瞬間だった。やがてそれは過去となって紙に映し出される。この一枚があれば、いつだって寂しくない。夏休みは、記念写真をいちばん美しく撮れる季節です。




稲田平氏
評&演出
写真とは狙わなくても飛び込んでくる時があります。夏の歩道で麦わら帽の青年とおばあさん。ふたりの会話はきっと夏休みならではのものなのでしょう。このなんてことのない情景が時代を繋ぐのです。すごく暑いのだけど、なぜか涼を運んでくれる風鈴のような作品です。




新保勇樹氏
評&演出
もうあの日には戻れない。けれどこれで良かった。ほんとうは少し後悔しているけれど、こうして悩むことだって、きっと夏がわたしを変えたから。女にしかわからない刹那を、勝手にほじくり出している男の右脳にカンパイ!




武田英志氏
評&演出
スケボー、サーフパンツ、スニーカー、そしてシェイク。時代がどんなに移ろうとも変わることのない夏の少年像。夏休みだからヨコノリ。横道に反れるのが夏休みの最高の経験なのだ。




フグ氏
評&演出
観光地の番人はつらい。掻き入れ時には気を抜くなんてできない。カメラを向けられたら目線を突き刺してポーズとらなきゃ。僕らは熱中症になんてならない。それがプライドだ。




山路紳多郎氏
評&演出
それが叫びなのか破壊なのか暴走なのか、答えなんて要らない。言えることはただひとつ。これは魂の躍動だ。それが鎮まるとき明らかに季節は変わっている。夏が暑いのは太陽のせいではなく、僕たちの魂のせいなんだ。




平野哲郎氏
評&演出
夏休みはかごの中。飛び出したいのにそんな勇気なんてない。もちろん自慢の羽根を思い切り羽ばたかせたいと思ってる。けれど、誰かが扉を開けてくれたとしても、私はきっとここから飛び出そうとは思わない。夏休みが私を変えてくれるなんて、ぜったいにありえない…




空山美奈子さん
評&演出
シャッターチャンスをものにすることも実力のひとつです。しかしよくもまぁこんなに美味しい瞬間を。一枚の写真でストーリーと空気がわかる大傑作です。




伊東茂樹氏
評&演出
僕にだって痛みがあるのに、それをわかってもらえないのは、僕がすいかだから?食べ物だから?叩かれて壊されて、君たちの胃袋の中に入ればそれでいいの?気が済むの?だけどね、聞いて。どんな形になろうとも僕のハートは真っ赤だよ。太陽はずっとずっと僕の心の中にあるんだから。




太田好治氏
評&演出
ぜんぶ日本人だったらなんてことない写真だけど、みんな西洋人だから真ん中に居る彼が浮いてイカすのです。顔が小さいとか手足が長いとかそんなのカンケーネーっ!それにしてもみなさん見事な笑顔ですね。こんなにハッピーな瞬間を閉じ込めることができるなんてそうあることではありません。すぐさま年賀状にすることを勧めます。




カイセサトシ氏
評&演出
歴史的な酷暑の夏、意識朦朧とする中でその琥珀色の液体のみならず君まで飲み干してしまいたいシーズン・イン・ザ・サン。売れるわけですね「金麦」。こんな真夏にど真ん中のストレート投げ込まれるなんて…。もちろんフルスイングの三球三振です。




是永はづき氏
評&演出
夏休みなんて、所詮なにもやることがないものだ。何かが引っかかってくれたらそいつと遊ぼう。だけど無理だな、釣りをしているのは僕じゃないもん。釣りをしているふりをして、単に時間が過ぎるのを待っているだけなんだ。夏の虚しさを濁った水に映す、溜め息の作品です。




西尾栄一氏
評&演出
後のことなどなにも考えなくて、ただその一瞬に金魚をがっぽりすくえればいいというまるで計画性のない残酷な遊び。かつて大ブームを巻き起こしたシベリアンハスキーが、その3年後には山林に大量に捨てられたように、いくら子供のときが可愛いからといってむやみにペットを飼うもんじゃないですよという痛烈なメッセージを込めた社会派作品。




溝口晴喜氏
評&演出
むにゃむにゃむにゃ。おとぎの国の住民たちは元気をなくした森の木々に声をかけました。「もっともっとまっすぐ伸びてきれいな緑の葉っぱをつけておくれ」。むにゃむにゃむにゃ、ちょびっとボヤケているのはやっぱ夢のせいかな。環境問題に正面から向き合う勇気ある夏の研究作品。




hanakoさん
評&演出
始まろうとする夏。盛夏。終わろうとする夏。いろんな夏をせんぶ川の流れがさらってゆく。人生だってそう。ずっと居続けたい場所になんて居られない。ただただ流されていくだけ。そこにとどまっていられるのは、一枚の写真の中だけ。




羽場正起氏
評&演出
コンドームってどうして夏なんだろ?どうして汗びっちょりなんだろ?どうしてマイルドセブンとコカコーラのペットボトルなんだろ?どうして情けないんだろ?どうして嫌われちゃったんだろ?どうしてAVと違うんだろ?どうしてどうして夏休みなんだろ?





次回もプロアマ問わず、これを見ているあなたからの投稿もOKです。
写メール画像でも構いませんので、何でも送ってみてください。




『写らら』編集長マロンブランディーが、辛口で批評しつつも素敵に演出してみせます。
グランプリに輝いた方には気まぐれで何かを進呈いたしますので、お楽しみに。



また、本コーナーに掲載した画像に関する著作権は、特に明記がない限りマロンQエストに帰属しますが、原則的に掲載は本サイトのみとし、他媒体への転用はしません。尚、掲載後に投稿者からの削除の申し出があった場合は、内容を検討し適宜考慮します。




それでは、次回もあなたの投稿をお待ちしています。



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9月5日今週の朝礼『ノーモア宿題』

 もう9月ですよ。こうなると8月は一体なんだったんだってことになりますよね。
 夏休みなんてそういうものです。
 でもご安心ください。宿題なんてもんは、やったから立派だとか褒められるとかいう類いのものじゃなくて、やらなかったからその分巻き返さなきゃなと思えば、それで十分宿題の存在は成立するものなのです。

 そもそも宿題なんてもんは、40日もの夏休みの中で少しぐらいは机に向わせなければならないでしょ、というゆる〜い規律を文部科学省が各都道府県の教育委員会に押し付けて、それを各校がまともに受けて、別にやろうがやろまいがどっちでもいいのに、とりあえず的にできあがった夏休みのルールみたいなもの。
 私学は私学で夏休み中に勉強させとかないと非行に走られて学校の評判が落ちるからという、まぁ大人の勝手なエゴみたいものから誕生したものだから、それを本気でどうこう言ってくる先生もそうそういるとは思えないし、現に宿題をやらなかったからといって死刑になるとか留年するとかという話なんて一切聞いたことがない。
 本当に勉強したいやつは休みじゃなくてもやるだろうし、やりたくないやつは学校や塾に行っても問題と答えが右の耳から左の耳へと抜けて行く。それが現実なのだから、大切なのは宿題よりも個人研究なのである。
 かといって毎日何かを観察してノートに書き溜めるということではありません。研究とは、興味ある物事に対して観察、確認し、それを経験とする作業である。多少スケベなことや、タバコ吸ったり酒飲んだりケンカすることだって、十分な研究なのです。
 そうして『経験』と言う名の個人研究をしたら、それを一度自分の懐にしまい込んで、部屋に持ち帰り、その事実(研究)と向き合い、ときに反省しながら、さらなる研究課題を見つけていけば良いのである。

 勘違いしてならないのは、親や先生に逆らうことが目的ではないということだ。あくまでも自分が関心あることを自分の手と足で探し、そこに向い、そこの空気を体験するということが目的だということを忘れてはならない。結果的に親や先生に迷惑を掛け、自分も反省し後悔したとしたら、それこそが最も大切な経験ではないか。この無茶苦茶な世の中で、やってはいけないことを知るということは何事にも代え難い財産であり、やがてそれは大切なモラルとなる。
 もし、この国の学校教育に、夏休みの宿題よりも夏休みの個人研究の方が大切で、しかもその内容はまったくもってなんでもありという方針が各都道府県で実施されていれば、理不尽極まりない殺人事件は激減しているに違いない。やってしまってから知る現実なんてものほど残酷で意味がないものはない。やる前にブレーキをかけることができる青少年をつくるには、なんでもそこそこやらせること以外に方法はないのである。

 山口百恵の『ひと夏の経験』は、30年以上も昔に今日のダメダメ日本列島を予言して唱われた、若者達の教科書であることを忘れてはならないのである。




2007/11/28

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 六

2007/11/21

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 伍

2007/10/09

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 四

2007/09/11

写真バカららばい 第2回 『夏休み』

2007/09/05

9月5日今週の朝礼『ノーモア宿題』
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