『おもいでの各駅停車。』 著者紹介


こいけさん。福島県出身中目黒在住。某私鉄の車掌さん。
幼少期より鉄道と時刻表が好きで、小学校高学年頃にはどっかの鉄道会社の、できればJRの車掌になることを夢見て、高校卒業と同時に鉄道会社に就職。現在は車掌として電車のスムーズな運行と乗客の安全に努める。



『実録!武漢道(おとこみち)』著者紹介

ニシ。職業・鳶。中京高等学校卒業。在学中は応援部団長を勤める。
数々の武勇伝を持つ伝説の不良。胸の奥にはいくつもの傷跡とせつない人間ドラマが隠されている。なぜか業界関係者との縁も多く、人気アーティストの打ち上げに顔を出すことも多い。信じられない話だが小学校中学年時にはゴリラと生活を共にした。趣味は手料理。麻婆豆腐の腕前はプロ級。



センチメンタル・コラム 「ポロリ。あの唄、あの匂い…」



「誘われてフラメンコ」 郷ひろみ
誘惑って誘拐と同じぐらい悪い事だと思ってたのに、
大人は誘惑されると心ときめいちゃって、
“変だなぁ大人って”って思っていた僕自身が、
大人になった今では毎日誘われてフラフラ。
けれど甘い罠だとわかっていながら足を踏み入れる勇気と
好奇心があってこそ男は永遠に男のコでいられるもので、
ドキドキしない恋や罠のない人生なんて、
気の抜けたビールのようなものだということを
19歳の郷ひろみが教えてくれた。


「キャンディーズ」 キャンディーズ
キャンディーズか?ピンクレディーか?それが問題だった。
時には答えをめぐって流血騒ぎにもなった。
さらに三人の中で誰が一番可愛いかでまた流血。
ランちゃん派とスーちゃん派は乱闘になるのに、
ミキちゃんが一番という奴にはなぜか血が騒がなかった。
そんなバランス感覚の良さこそがキャンディーズの魅力だった。
コンサートでしか聞けないこの曲を知ってるかどうかで
ファン度は試され、さらに究極のファンはこの曲から
『ハートのエースが出てこない』へとリレーするグルーヴに
熱狂し拳を突き上げた。


「失恋レストラン」 清水健太郎
「ポッカリあいた胸の奥に つめこむメシをたべさせる」
まるで戸塚ヨットスクールみたいなマスターに
失恋の悩みを打ち明けるのもイカれてるが、
ギターを膝に抱いて熱唱する健太郎の
尖ったアゴが妙に心に突き刺さって、
あえて両想いより失恋に憧れたあの頃。
ツッパリ=リーゼントという定義をぶっ壊した健太郎カットだが、
要はパンチパーマを上向きではなく下向きに
グルグル巻きにしただけのものだった。


「東京ららばい」 中原理恵
深夜ラジオの向こう側に東京を感じた。
憧れて憧れて、どうしようもなく東京に憧れて
張り裂けそうになってたあの頃。
えっ、華やかな都会には夢がない明日がない?倖せが見えないって?
これから東京に旅立とうとしてるのに、どうしてそんなこと言うの?
グリースで固められたショートへアを頬杖の上に乗せて、
中原理恵が微笑んでる。失恋や涙もロマンだって、
そんなことニキビ面の高校生に言ったってわかる訳ないよ。
だけど俺は東京へ行く。
そして23年たった今、僕はやっぱり東京にいる。


「魅せられて」 ジュディ・オング
よく考えればムード歌謡の豪華版という感じがしないでもなかったが、
ジュディ・オングのレースのカーテンのようなドレスとマンドリンの
調べが妙にリゾート感を運んできてなんか気持ちよかった。
そういえば曲の舞台はエーゲ海だったなぁ。
阿木耀子独特のおしゃれなエッチ感が詩われてて、
ジュディのUh…Ah…ってため息がいつまでも耳から離れなかった。
『ザ・ベストテン』でジュディ・オングと黒柳徹子が並ぶと
目が悪い人はどっちがどっちかわからなかった。


「雨音はショパンの調べ」 小林麻美
小林麻美だから感じた。彼女だから、怖かった。
可愛いとか美しいとか、そんな単語でしか
女性の魅力を表現できなかった頃、彼女の囁くような仕草に、
妖しさという女性の新たな魅力を憶えてしまった。
時にバブル絶頂期。こんなオンナをモノにできるのは
金と地位のあるオヤジしかいないと思い、
何もない自分を卑下したものだ。
長い黒髪に纏わりつくような彼女の瞳が、
“早く大人になりなさい”と僕を子供扱いする。
いつかショパンの似合う男になってやる。
そのとき僕の隣にいるのは、アサミ、君だ!
それが僕らのバブルへの挑戦だった。


「そして僕は途方に暮れる」 大沢誉志幸
CMにこの曲を採用したことからカップヌードルは
単なるインスタントラーメンではなくなった。
湯気の向こうにある悲しみやせつなさを麺といっしょにズズッとすすると、
胸の奥まで温もりが木霊して、途方に暮れた僕の指先で
フォークに巻かれた麺がささやいた。
“いつまでもボーッとしてたらのびちゃうぞ”。
恋も仕事ものんびりしてたら逃げてしまうことを、
カップ麺から教えられた80年代。やがてミスチルへとつながっていく
カップヌードルのドラマは、このとき始まった。


「さよならの向こう側」 山口百恵
“アイドルだって大人になっていくものなの。ゴメンね。わたし、行かなきゃ”。
爛漫に花を咲かせたままマイクを置き背を向けて
遠ざかって行く百恵ちゃんの背中。
それは80年代という時代の幕開けであり、
僕たちが子供を脱ぎ捨てるための儀式だった。
夢を与えたディーバはひと筋の涙とともに
時代の扉の向こうに消えて行ったけど、
日本中の誰ひとりとして彼女を責める事はしなかった。
「後姿 見ないでゆきます」。
彼女の決意に、すでに伝説は始まっていたのである。


『XROSS ACT2 DOGWOOD Club』 (SME)



12月1日 今週の朝礼『リニューアル』

朝礼というか、12月1日深夜0時ちょうどに合わせて書いてますので夜礼です。
本日よりマロンブランドのホームページをリニューアルしました。
リ・ニューアルという響き。いいですね。
リ・サイクルとかリ・スタートとかよりも軽い気分がしていいです。
ちょっと飽きたので変えてみました、っていう人間の性みたいなもんが感じられていいんです。
人はみな、特に会社なんかはもう、なにかテコ入れしようとするときに、
なんでもかんでも仰々しく飾り立てすぎです。
それがコマーシャリズムだったりするから仕方ないのですが、
ほんのちょっとだけプチッと変えてみたりズラしたりするだけなのに、
わけのわからないメッセージまでたっぷり詰め込んで、
エコだ地球だピースだって、何の会社だか意味が分からなくなってしまうことが多過ぎます。
そんなキレイごと言ったところで庶民には通じませんよ。みんな飽きちゃったんですよ、その類いに。
もっとサラッといきましょうよ、サラっと。
価値観とか感情とかって、気分しだいで変わるから幅や奥行きができるんだと思います。
要するに人はいろんなことに飽きるから成長できるんですよ。
ほんとうはソコが大切なのに、変えようとすることの理由付けに時間と労力をさいて、
まぁわかるけど、もっといい感じで軽はずみに変わっていこうじゃありませんか。
もちろんリ・ニューアルしたからといって、それまでのことを忘れたりぞんざいにしたりはしませんよ。
過去があるからこそ希望は沸き上がるのですから。
とにかくリ・ニューアルです。
飽きたらまたすぐ、リ・ニューアルします。



『片道切符の旅立ち』


1987年春。
高校を卒業して故郷を離れる時、磐越西線山都駅で切符を買った。
窓口で僕の良く知っている初老の駅員さんが、
「宏康、片道切符でいいね?もう、往復切符を買ってはだめだよ」
と言って、硬い紙の切符にハサミを入れて僕に渡してくれた。

僕は最初は何を言っているんだと思ったけど、
汽車に乗って、 雪が残る肌寒そうな車窓をぼんやり眺めていたら、
駅員さんが言った意味がなんとなくだけど分かってきて、
というか電車に揺られている間にきっと分る気がして、
握っていた切符を無くさないように財布の中にしまった。

僕の持っている片道切符は、
引き返すことはできないけど、
旅の途中で美しい風景に出会ったら、
その駅で降りてもいい。
もし、その街が気に入ったら、
そこで生活をしてもいい。

汽車に乗る人、降りる人。
みんなそれぞれの片道キップの旅をしている。
僕はそう思う自分の考えにちょっとだけ酔いしれた。

途中駅から乗ってきた旅人が、
「あなたの隣に座ってもいいですか?」と尋ねてきた。
その人と一緒に旅をしてもいいなと思えば、
「どうぞ」と言って一緒に旅を続けよう。

汽車は、
朝も、昼も、夜も、
芽吹きの春も、
暑い夏の日も、
木の葉に色づく秋の日も、
粉雪ちらつく冬の日も走り続ける。

汽車は、いつも平らな線路を走るとは限らない。
線路は山も海も川も越えてゆくのだ。
上り坂はもう一台の機関車と力を合わせ、
下り坂はスピードが出ないようにブレーキをかけて、
急カーブは脱線しないように速度を落として走るのだ。

鉄橋やトンネルを走る時もある。
その鉄橋がどんなに長く感じても、
渡り終えない鉄橋はないし、
そのトンネルが長く感じても、
出口のないトンネルはない。
目の前に行き先が別れるポイントがあったら、
その先が未知なる線路でも、
行きたい方向へ進路をとればいい。

もし、
行き止まりの終着駅に着いたとしても、
慌てることなんてない。
終着駅は始発駅だ。
窓口で片道切符を買って、
新たな旅を続ければいいのだ。

手にした片道切符に励まされるように、
18歳の僕は西へと向かった。





2006/12/07

『おもいでの各駅停車。』 著者紹介

2006/12/07

『実録!武漢道(おとこみち)』著者紹介

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2006/11/30

『片道切符の旅立ち』
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