『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾七

〜一回生の章〜 拾七


 スタンドに入ると相手側の応援席にカラフルなポンポンを持ったチアガールとハチ巻き姿に学ランの応援団が早くも陣取り試合に備えていた。今春選抜大会に出場し、あのアルプスで応援した自信の表れか、、、。
 それを見てヨシダは「ジャァシーわ、大府ごときが」と吐き捨てた。母校の応援席には昨日見たOB達が雁首揃え座ってる。
“お前等野球部関係者より威張り腐ってんな”
 ヨシダ、オオツカがそいつらに一礼し俺達は配置に着いた。
 暫くすると相手応援団々長はじめお供の団員がやって来て悪魔二人組に挨拶。ヨシダの殺人ビームを受けながらも笑顔で応えていた。
 いつもならそんな相手を威圧するオオツカの姿が無い?俺たちは神出鬼没を得意とするオオツカを探した。するとオオツカは今日団旗持ちを命じたタイチの前に立ち何やら死に物狂いでしゃべっていた。
「ええきゃぁ~、何があっても下ろすなよ!団旗地べたに付けたらぶっ殺すぞ!」
 オオツカは観客がいるのも気にせず殺人予告を掲げていた。この模様は文章では表現できないぐらいマンガ的です。

 タイチは初めて装着する“団ベル”(団旗専用ベルト)相手に悪戦苦闘してる。団ベルは革製で2本のショルダーベルトに腰回りに20センチ位の極太ベルト、そしてコチン前に団旗ポールを差し込む筒状のカップが付いていた。よく分からない方は、巨人の星に出てきた“大リーグボール養成ギブス”をイメージしてね!余計にわからんという人はサラッと読み流してください。
 ヨシダが「全員起立、脱帽」と声を張り上げた。
 校歌を斉唱し相手校へのエールを送った。そして大府高側からは俺達以上の声でエールが送られて来た!
 この光景にいらつくOB達。
 ともあれ試合が始まった。俺はタイチが心配で時折スタンド上段を見上げた。そんな心配をよそに団旗は勢いよく靡いていてる。試合前からあやしい雲行きだったが二回を終わる頃にとうとう雨が降り出して来た。「あ~あ、中止になりゃええのに…」そんなやる気なさをよそに試合は淡々と進んで行った。

 マウンドから豪速球を投げるマキハラ(元巨人/せんだみつお似)に活路を見出だせない母校。前年の選手権予選、秋季大会と大府に二連敗中の母校に回を追うごとに厳しいヤジと俺達応援団に叱咤怒声が飛ぶスタンド。昨日のヒーロー気分は消え失せ、まるでヒールになったような俺達…。
 そんな中、先制点は大府に入った。相手スタンドはポンポンが舞い上がり笛や太鼓が鳴り響く。そんな歓喜の声を“消せ!”とばかりヨシダ自ら“フレッ、中京”のエールを振る。が…勢いづく大府に追加点が入りそのエールも掻き消されてしまった。何とか失点を2で食い止めた中京、しかし攻撃はマキハラの前に凡打の連続でチャンスを掴めない。中盤を終え雨足が強くなり風が強くなってきた。

 ふとタイチを見ると鬼の形相で立っている。
“どした?便所でも行きたいきゃ?”そんな間抜けな考えは瞬時にぶっ飛んだ!団旗が雨に濡れ重さを増し風に煽られ普通に立っていられないのだった。ましてや団旗を付けるポールが昔ながらの桜の樹、硬くて重い…。初めて団旗を持つタイチには過酷な条件が揃いすぎたのだ!
 “頑張れタイチ、落としたら殺されるぞ”。そんな願いも虚しく雨と風が一層強くなって来たゲーム終盤、最前列ではオオツカによる応援歌のエールが始まった。コールドゲームになってもおかしくない天候に母校は意地を見せ同点としてゲームを振り出しに戻した。
 静かだったスタンドは息を吹き返し大声援を送る。しかし今一歩マキハラを捕らえきれずどうしても逆転出来なかった。
 そして最終回、大府は疲れが見えはじめた中京のエース・ニワを攻め虎の子の1点をもぎ取り、最後の中京の攻撃もマキハラ(せんだみつお似)の豪腕で凌ぎ3-2のスコアで母校は敗れた。

 終了後のエールを終えタイチの下へ走ると、憔悴しきったタイチが仲間に支えられぐったりしていた。そんな俺達をよそに先輩やOB達はそそくさと球場を出てあの説教場所へ向かっていた。俺達に送られる労いの拍手も雨に掻き消されるほど雨足が一段と強まった春の嵐の日だった…。

しかし、春の嵐以上の嵐が待ち受けているなどとは…。

<続>



『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾六

〜一回生の章〜 拾六


 初陣を勝利で飾ったものの先輩やOB達のボヤキや小言で喜びがぶっ飛び暗い気分で迎えた翌日、気が乗らずダラダラ着替えていると、
「どないしたんや、ダラーっとして。今日も応援やろ、気合い入れて行かんかい!」と内情を知らない親父が新聞を見ながら言った。
「はいはい、そやけどなぁ勝ったのに怒られるし文句言われるしやっとれんで」とぼやく俺に、
「ほなケツ割るんけ?ワレの同級生にええピッチャー(ノナカ)おんねやろ、ワレが団長なって儂を甲子園連れて行ったれや!」と親父はハッパを掛けた。“団長ねぇ~。それより続けられるかどうかが問題やわ”と考えながら球場へ向かった。

 空は昨日とは違い曇天、まるで俺の気分と一緒で試合前から滅入ってしまう。先輩に言われたように2時間前に球場に着いたが、応援団どころか客や学生すら歩いていない。聞こえるのは隣接したグランドから聞こえるママさんソフトの打球音と声援だけ・・・。しばらくしてタイチとマコト、マサトが来た。
「オッス」
「なあ、アイツ等俺んたに2時間前に来いって言ったけど自分んたは来んだろ?」とタイチ。
「来やせん、来やせん。今頃まんだ上前津の茶店におるやろ」とあの二人の分かりやすい行動パターンを解析する俺。するとマコトが、
「交代でヤニ吸いに行こまい」とポッケから“ブンタ”(セブンスターの略)を出してニヤリと笑った。俺とタイチは昨日先輩達がヤニを吸いに行った古墳へ上がった。
ヤンキー座りをしてタバコをふかし互いに昨日の事を愚痴っていると下からマコトが
「まだかて~」と催促。一気吸いをしてマコト達と交代。そこへコウタロウやシモ、セイゴが合流。そして昨日ぼろくそに言われた白豚イトウとヤマダ一号も…。

 試合開始1時間前ともなると駅からの道が人で溢れ始めた。
「そろそろ来るな」統制のマコトの声に横隊する。
「……ん?」イナモトとスズキは太鼓運搬でまだ来ないにしても二、三人足らない。
「おいマコト、カトウとタオカ、それとそれと…あっヤマダ二号は?」と聞くと何も連絡が無いとキョロキョロするマコト。
「辞めたな」とセイゴが言えば
「根性無しが」とタイチがなじる。
「それより無断だったらまたあの人達に怒られるぅ」と昨日の恐怖を甦らせるイトウ。その一言が俺達をブルーにした。ざわつく烏合の衆にマコトの声で緊張が走る。
「来た、いいか…押忍!」マコトの合図に連動し挨拶する。二人は肩で風切り、泣く子は殴る勢いで反社会的人相を全面に出し歩いて来た。ヨシダもオオツカも昨日とは違い少しヘラヘラしてる。おおよそ茶店の女とデートの約束をしたか電車でいい女見たか、駅の階段でパンツを拝んだぐらいだろう。“はぁ、単細胞”しかし…いつまでもヘラつくヨシダに対しオオツカの眼がアナコンダに変貌した!
「一年、何人か足らんだにゃぁきゃ?遅刻きゃ?連絡は?」それを耳にしたヨシダが
「チコツ~?いやチコク~!」とすべりまくりのギャグを交え横隊を見た。
「青白い奴とザクロ顔とタラコくちびるは!」名前を覚えきらないヨシダはそいつ等の特徴を叫んだ。タジタジする俺達に、
「まあええ、明日部室に連れて来い」と冷たく言い放つオオツカ。そしてヨシダは、
「ええきゃ、今日はあのマキハラがおる大府や。去年の夏の予選、秋の県大会と我が校は連敗中や。プラス選抜に出てええ気になっとる。今日は絶対勝たなかんで死にもの狂いでやれ!ええきゃ!」と鼻息を荒くした。

 間もなくして太鼓運搬班のイナモトとスズキ、二回生のナカシマとムラマツも合流した。だが二回生の団旗持ちカコと焼肉ダンスのヤスオがいない。聞くとカコは風邪でヤスオ急用との事だった。俺達は顧問が来るのを待ち三塁側入口で待機した。そこでオオツカからとんでもない言葉が発せられた!?
「ウチヤマ~(タイチ)今日はテメェが団旗持てや!団の顔、ひいては学校の顔やで旗落としたり、地面に付けたりしたら、ぶっ殺すぞ!」と恫喝した。

 押忍としか返事が出来ないタイチは虚ろな眼で空を見上げた。これが後の大事件に発展するとは誰も分からない、雨雲が立ち込めて来た試合前だった。


<続>



『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾伍

〜一回生の章〜 拾伍


 集合場所で自然体の姿勢で立っていると団長ヨシダと副団長オオツカが苦虫をかみ砕いたような顔で近付いて来た。“おいおい、二人共顔面凶器なんだでにこやかにしてくれよ”と間違っても口に出せない台詞が頭を駆ける。しかしそんな事を考えてる場合ではなかった。
「てみゃぁら、しっかり声出さんでOBにどえりゃぁ言わされたでにゃぁきゃ!ドたわけがぁ~!」
 ヨシダが早口でまくし立てると今度はオオツカが
「二年、貴様等ちゃんと一年に指導しとんのきゃ?特にあの白豚(イトウ)は明日までにビシッとやっとけ!胸クソ悪い…」
 二人共よほどOBに叱られたのか極限に機嫌が悪い。ヨシダはもっと文句を言いたそうだったが、顧問のクマさんとOBが数人やってきたので口をつぐんだ。そのヨシダが顧問とOBに向かい「押忍!」と大声で挨拶した、それに習い他の団員も一礼し横隊をとる。まずは顧問の労いの言葉から始まり次いでOB達の有り難いのかどうでもいいのか分からない説教が始まった。それにトム&ジェリー五話分の時間がかかるとは思わなかった。若干若いOB達は自己紹介と明日の激励程度で終わったが、今の俺達(四十代)のOBになるとまず自己紹介からして長い。

 その中の一人で、七三分けに眼鏡、スリーピースをビチッとはち切れそうに着た今で言うメタボリックなOB。
「あ~諸君、私は昭和〇〇年甲子園出場時の第〇〇代団長のカタオカであります。一回生の諸君は初めてだな、カタオカであります。栄光の我が応援団に入られこれからの活躍を期待する。本日は御苦労」
 広いデコに汗を垂らしながら涼しい顔で喋る姿はさながら選挙演説の代議士のようだったと言うか“本日は御苦労”が先じゃねえのかよ。そいつは続けて喋り始めた。長くなるので抜粋すると、応援のリズム、攻守の切り替え時の空白、適材適所の人員配置、一回生の体力と声の出し方とまぁキリが無いったらありゃしない。
 そいつの癖が悪いのは、一つのテーマが終わると必ず「それからもうひとつ!」と仕切り直し話しを始める事。だからいつまで経っても終りが見えない。俺達の自然体がだらりとなるのを察知したもう一人のOBがそのカタオカをやんわりと止めた。カタオカの台本にはまだまだ台詞があったのだろうがひとまず無理矢理まとめて後ろへ下がった。そのカタオカの暴挙を止めたOBは、
「僕は第〇〇代サマノといいます。顧問の熊谷先生と大学で一緒でした。以後よろしく」
 とカタオカと違いあっさり挨拶を終らせ俺の好感を得てた。さぁ~終りか、やれやれと一瞬気を抜いた時だった。数人列ぶOBの後ろからさっき球場でほざいていた白豚オヤジが姿を現した!?“おいおい部外者、球場内はともかくここは関係者以外ご法度やぜ”と睨んでいると、事もあろうかあのカタオカが体を小さくして「どどどうも、いらしてたのですか?」と梨元ばりに恐縮してる。“誰だあの白豚”余裕こきまくりの白豚は俺達の前に二足立ち、いや仁王立ちしてニヤリッとした。悪魔二人も顔を見合わせ首を傾げてた。白豚オヤジはイチベツすると、
「儂はフジモト、当然OBだ。歴史はそこのカタオカにでも聞いてくれや。それにしても数年振りに応援を見たがなっとらん!全くもってなっとらせん!こんな応援では万一甲子園へ行ったとて恥ずかして披露でけせんわ!明日、いんや今大会は無理とて夏の予選までにはまともな応援が出来るように。特に三回生の二人格好の前に質を付けろや。以上!……あっ、ヨシアキしっかり頑張れ」

 白豚オヤジは最後に意味不明な言葉を残し威風豚々(とんとん)と帰って行った。その後をカタオカ達若輩OBは蝿の様に手を擦り金魚の糞よろしく行列を作り公園を後にした。残った俺達に顧問から解散命令が…。先生を見送り一息とおもいきや悪魔二人が烈火の如く怒り狂った!
「ヨシアキって誰じゃぁ~?あの白豚と何の縁故があるんじゃ~?名乗り出んきゃぁ~!」
 青い森をバックに吠えるヨシダが本当にジャングルのニシローランドゴリラに見え、誰かと疑うオオツカは獲物を仕留めようと樹から身を垂らしたアナコンダのようだった。
「誰だ!出ろ!」
 自分達でない二回生達も声をあらげる。俺達一回生も顔を見合わせていたその時!さっきの白豚オヤジと同じシルエットを持つ奴を発見してしまった!一回生の白豚ことイトウである。顔を紅潮&硬直させたイトウが一歩前に出た。
「おみゃぁ~きゃぁ~!なんだあのクソオヤジは?おみゃぁのなんだて~!」
胸を叩き雄叫びをあげるヨシダに
「おお押忍、叔父であります。母の兄で割り箸の卸し屋で…それで、それで…」
「もうええわっ!てみゃぁの叔父でもOBでも関係にゃぁ~!俺らに文句言いやがって、副団長かなんか知らんが今度会ったらぶっつぶす。お前も辞める覚悟しとけや!気分悪いで帰ってくぞ!明日の集合もここで試合前2時間に集まっとけ、ええきゃ!」
 何振り構わぬニシローランドゴリラは雄叫びをあげアナコンダと共に彼方へ消えた。
 初陣を勝利で飾ったのに大敗の原因を押し付けられたような縦の関係を思い知らされた苦い夕刻だった。


<続>



名刺

ついに名刺をつくってもらいました。

私、今日から名前が少し変わりました。
芸名が出来た気分です。

「すみません、まだ名刺がないんです。」と言わずにすむようになりました。

最初の一枚はどなたにお渡しできるんかな〜とかちょっと浮かれてこの日記を書いていたら、
たったいまお客様がきて、あっけなく名刺デビューは終りました・・・。



彼女の恋

サッカーの中田選手やMr.Childrenの桜井さんを見ると、
たまに同級生の女の子のことを思い出すときがある。

彼女とは保育園から中学校まで一緒だった。
家も近く小中学校ではよく遊んだ。

彼女はとてつもなく惚れっぽかった。
主に芸能人に。

中田英寿選手、桜井和寿さん、柏原崇さん、スキージャンプの荻原さん、
漫画「イタkiss」の入江くん、ブルースウィリスさん、キアヌリーブスさん、
トムクルーズさん、モーガンフリーマンさん、デイヴィッドドゥカヴニーさん・・・。
まだまだ数えればキリがない。
(っていうかあとは誰を好きだったか忘れた。少なくともあと20人はいるはず。)
同級生のかっこいい女の子のことまで好きになったこともある。

とある芸能人男性のことは、中学生のとき、不倫騒動が出たからきらいになった。
そのときは私がフォローして慰めた。
デイヴィッドドゥカヴニーさんの出演しているX-FileのDVDも一緒に観た。
「このときのモルダウがかっこええがよ!!」と言って何度も巻き戻し早送り一時停止・・・。
結局モルダウの顔を観て時間が過ぎた。

そんな彼女に付き合うのはきらいでもなく、
「ほんま色んな人好きになったねぇ」とふたりで彼女の好きになった人を思い出しながら数えた日々・・・
「次は○○が好きになった!」ということばを何度聞いただろうか。

今思うと、彼女は私の友人の中でもちょっと変わった存在やったなぁ。

高校は離れ、それ以来連絡はとっていない。

彼女にとって「恋」ってなんだったんだろう。

彼女は今も恋してるのだろうか。




2008/09/02

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾七

2008/07/17

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾六

2008/07/09

『the head・団長への道』〜一回生の章〜 拾伍

2008/06/25

名刺

2008/06/20

彼女の恋
このサイトに掲載のイラスト
写真・文章の無断転載を禁じます

Copyright © 2001-2010 MaroonBrand