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この季節になると風物詩とでも申しますか、当たり前のように忘年会が行われます。
特別何をするというわけではなく、ただ酒を飲んで楽しくやりましょうというだけの話。どこに『忘年』といういう意味が込められているのかわかりませんが、とにかくこの国は年末のクソ忙しい時になると酒を飲みます。建前としては上司も部下もなく無礼講で酒を飲みながらコミュニケーションを計って翌年の仕事への意欲と換えようというところだと思うのですが、忘年会では必ずマイナス要素たっぷりの事件や発見が繰り返されます。
事件とは、ろくに仕事もできない若い社員が、若さと体力だけを買われて酒をバンバン飲まされて、いい感じに出来上がってしまい、ロレツがまわらなくなってきたところで、課長や部長のことを“ハゲ”とか“バイアグラ”とか呼んで、その場の空気が一瞬冷ややかになるのですが、ハゲ呼ばわりされた次長課長が“いいんだよ、今日は無礼講だから”といって、出来た人間っぽく振る舞うものだから、余計に若い社員がツケあがって、次長課長のハゲ頭をぺんぺん叩いたりしたところで、次長課長の堪忍袋の緒が切れて、本気でつかみ合いの喧嘩になってしまい、若い奴はまだまだ将来の選択肢があるから“こんな会社辞めてやる!”とタンカを切るのですが、次長課長はここで会社を辞める(辞めさせられる)ようなことになったら一家心中ものだと、ふと我に返り、途中でバトルを断念するのがセオリーです。
部下からは「○○次長って以外と熱いんだ」と軽く尊敬されたりするのですが、それを冷静に見ていた出納担当課長あたりから、事件の一部始終を役員に報告され、無礼講と銘うった忘年会で若い社員と本気でつかみ合いになるなど言語道断と厳重注意され、出世に黄色信号が灯るのが関の山です。
一方の若い社員はといえば、ただ若い、未熟だということで、言葉による注意のみ。次長課長にしてみたら何とも分の悪い乱闘になってしまうことが多いので、絶対に喧嘩はいけません。
次に『発見』ですが。これにはいろんなケースがあります。そのどれもが“え〜、知らなかった〜”系のもので、そのほとんどが芸を披露することによるものです。よくあるのが意外な人がマジックを披露して、それがまた抜群に上手くて、マジックのためのグッズや、中には網タイツ姿のアシスタントを用意している人までいます。
マジックをする人の中には勤務態度がすごく真面目な人が多く、だからして突然目の前でマジックを始められると社員は唖然としてしまうのですが、常日頃からのその人のギャップがその芸をよりダイナミックで精巧なものに映し、一躍拍手喝采の大ヒーローになります。
忘年会後の数日間は、部下や上司からもマジックを褒めちぎられていい気分で正月を迎えるのですが、年が明けると案外みんな忘れているもので、その妙技を覚えている人がいるとしても「忘年会はお疲れさまでした」程度の言葉しかなく、ちょっとがっかりしてしまったりするものです。
本当は正月休みを利用して新しいネタを練習していたりして、チャンスがあればいつでも披露する心構えはあるのですが、年が明けたら明けたでみなさん忙しく、年末の隠し芸のことなんてどっかへ飛んでしまっていて、これぞほんとの『忘年会』という感じで、すごく寂しい気持ちになってしまうことを知っておいてください。
さらに、マジックを披露した次長課長のグループの成績が落ちたり伸び悩んだりしていると、上司からは「マジックなんかやってるから成績が落ちるんだ」とお目玉を喰らうこともあって、忘年会でウケて一瞬嬉しい気持ちにはなるけれど、あとはロクなことにはならないので、いくらマジックが得意でも、会社のような理不尽で足を引っ張り合ったり罪をなすり付け合ったりするような場所では披露することを控えた方が身のためかと思います。
さらに酒を飲むと性格が急変するようなとんでもない『発見』の場合は、即刻超マイナス査定、哀しみのアップグレードです。
セクハラ、変態、マニアック、どれもこれも失速のマイレージがたまります。たまにある社員の変態っぷりを知って、“やっとワタシと同じ趣味の人、見ぃつけた”と予想外の幸福な発見がありますが、そんな場合はたとえそのふたりが結ばれても世間からは白い目で見られるのがオチで、犯罪を犯さないことを願うばかりです。
みなさん気づいてくれましたか?『忘年会』とは名ばかりで、実は人を陥れようとするワナがみっちりと詰め込まれた悪魔の会なのです。
間違っても忘年会で人気者になろうなんて気を起こさないように、注がれた酒だけをちびちび飲んで、注がなきゃいけない人にはぼちぼち注いであげられれば、それで忘年会という『仕事』は成就するのです。
今年もきっとたくさんの犠牲者がでることでしょうが、それでもやるという人は、勝手にやって左遷されたり業績ダウンのいわれなき責任を負ってください。
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