|
あけましておめでとうございます。
2009年もよろしくおねがいします。
それでは、おめでたくないストーリーの続きをおたのしみください。
〜一回生の章〜弐十一
教室の中からヨシダが笑顔で手招きしていた。俺は周囲の雰囲気に飲み込まれないよう目一杯の声で挨拶をした。
「押忍、一年ニシオ入ります。失礼します!」
昼寝をしていたガラの悪い輩が飛び起きて、 「なんじゃ餓鬼がぁ~」と機嫌悪い声をあげると、その機嫌悪い輩に、「じゃぁしいわボケ、儂んとこの兵隊だがや。だぁっとれ、ドたわけぇ~」と団長ヨシダ。
ヨシダに恫喝された輩は直ぐさま寝たふりをした。俺はそれが本当か仕込みなのか疑う余裕もなく、いつも通りの自然体をとり不良達の輪の中に悪寒つきで立っていた。
「おうチビちゃん元気きゃ」。番長ヨシダが笑う。
その横で団長ヨシダの二倍はある巨漢タカハシがサングラスの奥で目を細めていた(まるで竜鉄也です)。
緊張のあまり顔を強張らせていると、「おいエイイチ、辞めてかした(訳:辞めていった)連中がえらい羽根伸ばしとるみたいだにゃぁきゃ、どうなっとりゃぁす?(訳:どうなってる)」とおババが使う名古屋弁全開でヨシダが言い放つと、神父の服より長い学ランを捲り、「あいつらパーマネントあてて食堂でランチまでしとる始末…。な、な、なめとんのきゃぁぁぁぁ~!」とオオツカが奇声を発する。(このふたりは本当に息が合うというか、映し鏡と言うか、ひとりが何か言ったらかならず返す、まるでバカな山びこのようだ。ヤッホー、アッホー、なんちゃって…)。
その圧力にびびりながらも(俺のせいじゃないやろ)と冷静に考え黙り込む俺。しかし黙秘を続ければ殴られるのは必然、なんか言わなかん。
「押忍、どうすればよろしいですか?」
その言葉にヨシダがニヤリと笑った。
「あいつんたらー(訳:あいつら)に言っとけ。楽しそうな学校生活の感想が聞きたゃぁで明日一度ハウス(部室)に来るようにと…ええきゃ逃がすなよ」。補足するようにオオツカ(山びこ2号)が、
「今日言うだにゃぁぞ、明日の帰り際に全員集めて連れて来い。一人もきゃぁすなよ(訳:帰すな)」と俺の肩を叩いたた。そのいや~な感触は今でも鮮明に残ってる。
番長ヨシダやその他大勢の不良の方々は“御愁傷様”といった表情だった。(えらい事になった、あいつら殺される)。そんな一世一代の大役を仰せつかった俺は足どり重く悪の巣を出た。
教室に戻るとイナモトやセイゴ、マコトにコウタロウがこの世を謳歌するように馬鹿騒ぎしていた。
「ニシやんどした?あのデブちゃんなんやって?」。トラボルタみたいに櫛をあて余裕のイナモト。
「あっ、いや別に…」
言えなかった。いや言ってどうなるものでもなかったと思う。
放課後タイチとシモムラ、イトウに話の内容を伝えると皆渋い顔をした。
明けて翌日。浮かない顔でぼーっとしているとまたまたあの悪魔二人のロデム“クキ”が顔を歪めながら教室にやって来て、「おい援部の一年ちょっと来い」と廊下に呼ばれた。
胸を突くだけで5メーターは吹っ飛びそうな奴だけど、いかんせんあいつ等のロデム、下手に文句や手出しは出来ない。
「何の用っすか?」。ぶっきらぼうに言うと、
「あああ態度悪い、態度悪い。サトル達の前とえらい違う、言うぞ言うぞ。それより今日は辞めた奴達みんな来てんのか?ってサトルが聞いてましたけど」。だからなんで語尾が敬語なんだよ、と思いながら、
「全員来てるはずっスけど。なんなら自分で調べられたらどうっすか」
少し声を荒げ言うと、「わかったわかった、じゃあ僕はこれで」と逃げるように去って行った。
嫌な時間が刻一刻と迫って来る。まだなにも知らない連中はいつも通り馬鹿騒ぎ。
唯一シモムラだけが俺を不安げな目で見ていた。
昼飯が終わり俺達残留組は元団員がいるクラスを回り部室へ来るようにと伝えて回ると、ほとんどのヤツが理由を聞いてきた。
俺の口から出た言葉は「正式な退部届けを出してくれと言われた」。出任せにしては説得力のある最高の台詞だった。少々心苦しく思いながら…。
そんな俺を疑うでもなく皆口を揃え、「そやそや!正式に辞めないつ殴られるかもしれへんで!」と逆に歓迎ムード一色だった。
放課後、部室前で立っていると退部者達がゾロゾロ歩いて来た。二回生を見てもぺこりと頭を下げるだけで以前のような挨拶は無い。
そんな態度に二回生ムラマツがへらへら笑ってた。その顔がなんか余裕でムカついた。
まずは俺達残留組が部室へ呼ばれた。
ヨシダとオオツカはなぜか満面の笑顔で、
「やあ君達本日の働き大儀である、もはや幹部の君達は外で野球でも見ていなさい。代わりに外に居るゴミ共に中へ入るように言いなさい、へっへっへっ」
いつものおババ言葉は無い。俺達は外へ出て退部者達に中へ入るよう指示した。
俺達と入れ代わる様にヤツラが部室に入ると速攻で鉄扉が閉めら
れた。ついで、「てみゃぁら(訳:おまえら)どえらい調こいとらっせるだにゃぁきゃ(訳:すごく調子にのってる)おうコラッ!」とヨシダが叫んだ。
“ザザザ”後退りする無数の足音が聞こえた。
とうとう地獄のショウタイムが始まった!
<続>
|